この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

『遊びの流儀』遊楽図の系譜

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サントリー芸術財団50周年 遊びの流儀 遊楽図の系譜 サントリー美術館

野外や邸内で遊んだり踊ったりするさまを描いた画を『遊楽図』と呼ぶ事を、この展覧会で初めて知った。

 

「遊びをせんとや生まれけぬ」

は、『梁塵秘抄』の有名な一節。

遊びは人間が生きていく上では欠かせないものだ。遊びがなければ、どれだけ人生は味気ないものであることか。

 

 この展覧会で紹介されているのは、

  • 『月次風俗図』→1年12ヶ月の行事や風物を描いた図。
  • 『遊戯の源流』→琴や琵琶等の楽器を奏でる図、貝合せ等の遊戯といった、五感で楽しむ図。
  • 『琴棋書画の伝統』→琴・囲碁・書道・絵画をたしなむ図。
  • 『邸内遊楽図の諸様相』→邸内や庭先で繰り広げられる楽しみごとを描き尽くした図。
  • 『野外遊楽と祭礼行事』→遊女歌舞伎や人形浄瑠璃を鑑賞する人々の図。
  • 『双六をめぐる文化史』→昔の豪華な西洋双六(バックギャモン)や、絵双六等の紹介。
  • 『カルタ遊びの変遷』→うんすんカルタから花札まで。
  • 『舞踊・ファッション』→三味線を奏でる図。それに合わせて踊る図。

といったもの。

これは、公式サイトの説明文を自分なりに再構成してみたもの。

 

なんだろう、この絵に出てくる人達の表情が生々しくて、まさか当時の人達はこんな感じで年がら年中遊んでいたわけじゃないんだろうけど、江戸幕府の安定政権下ならこんな風に暮らしていけたんだろうか…。とか、展示作品内の世界は、生活の裏サイドがオセロのコマをひっくり返したみたいに全部表に出てきちゃった感じで、こうやって遊び中心に生きていくっていうのもありなのか?なんて、作品を見ながら自分の生き方を問い直したりしちゃったりして。

 

これらの絵を描いた絵師は、殆どが無記名で、歴史の中に埋もれてしまっている。でもリアルに描けているよなぁ。歴史に残る人物の肖像画よりも、よっぽど実在感がある。

そして、人々の格好がくつろぎ過ぎ!っていうぐらい、着物がはだけていたり、床にべったり座り込んでいる。

中には女性同士が絡んでいる図も…。

それから、女性よりも美しい女形みたいな男性の図もあった。

 

昔の着物は、現在出回っているものよりもサイズがゆったりめだった。だからこうして足をほぐして座っていてもそうは乱れないのだ。

こんなに楽なポーズが出来るなら、わたしは着物を着て暮らしたい!と思った。クリムトの愛用着とか、フォルチュニのデルフォスみたいなのとか(えっ?)、もっと日常的に楽に動ける服を着たい。

 

他に、男と遊女の間の手紙を取り持つ「文使い」という年若い禿(かむろ)の存在が気になった。そんな職種があったのか…。前髪をぷつりと切りそろえたおかっぱの少女。時代劇をあんまり見ないから、知らなかった。

ちょっと、アイコンみたいな存在に見えた。遠くから見てもすぐに分かったんだろうな。

 

前期展示の時に見に行ったので、チラシに使われている『婦女遊楽図屏風(松浦屏風)』(←これ国宝なのね!)は見られなかった。その代わり、これと同じ図が描かれた『カルタ美人図』は見られた。同時に見比べられないのは、ちょっともどかしい、かな?

 

この展覧会はとても面白かったので、こっちの屏風を見る為に再訪したいと思った。