この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

―明治150年記念― 明治からの贈り物

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先日、この展覧会のブロガー内覧会に参加しました。

 

今年は明治維新から丁度150年という事で、あちこちで明治時代の逸品を紹介する展覧会が開催されている。一つ前に紹介した有田焼のイベントもそうだった。

 

現在、静嘉堂文庫美術館で開催中の『明治からの贈り物』展もまさにそれ。静嘉堂創始者である、三菱第二代社長の岩崎彌之助、息子の岩崎小彌太(三菱第四代社長)が活躍した明治時代に作られて、岩崎家が収集した美術工芸の超一級品を公開するという、ど真ん中な企画! 明治好きには堪らない!

 内覧会の前には、河野元昭館長、長谷川祥子主任学芸員、そして青い日記帳Takさんがナビゲート役となったトークショーも開かれ、本展覧会の魅力、静嘉堂の魅力等を語ってくれました。

 

公開されているお宝の中から、気になった作品を紹介します。

 

※画像は美術館から特別に撮影の許可を頂きました。

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刺繡家・菅原直之助による『羽衣図 刺繍額』と『鞍馬天狗図 刺繍額』。

これはジョサイア・コンドル設計による岩崎家高輪本邸(現・開東閣)の貴賓室に飾られていたもの。

ピンぼけなので、この画像ではよく分からないかもしれないけど、豪華な蒔絵額が使われている。

 
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今回は美術館の方から特別に、作品のクローズアップ撮影も許可されたので、試しに撮ってみた。斜めから見ると、刺繍部分がより立体的に見えるんだよな。凄まじすぎる!あと、毛のフサフサした描写がやたらリアル!


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この菅原直之助という方は、作品に名前を記さなかったようで、現在確認されている作品数はかなり少ないそうだ。職人気質の人だったのだろうか。

何と狩野芳崖の『悲母観音』も刺繍化していたようだ。しかし、現在この作品は行方知れず…。

この謎の多さが、却って興味をそそられる。

 

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同じく岩崎邸の、こちらはビリヤードルーム(当時は玉突場と呼ばれていた)に飾られていた黒田清輝の『裸体婦人像』。

解説して下さったのは主任学芸員長谷川祥子さん。

 

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あの『裸体画論争』で、腰巻事件を巻き起こした問題作が、こんな所に飾られていたとは!

因みにこの部屋は女人禁制だったそうだ。男だけの空間にあると、まるで黒田清輝の裸体画が、グラビアアイドルのポスターのように見えてきて、可笑しくなってきてしまった。

明治ってやっぱり、男の時代だったんだろうか?なんか濃厚な、雄のにおいを感じたんだけど。


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菊池容斎呂后斬戚夫人図』。描かれたのは天保時代。


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漢書外戚伝の逸話を絵画化したもの。皇后の呂后が夫の死後、寵愛を受けていた戚夫人を捕えて嬲り殺す場面を細かく描いている。岩佐又兵衛か??と思わせる血みどろぶり。ううむ、これもえらいもん見ちゃったなと思わせる作品。

静嘉堂菊池容斎の傑作を、この作品を含めて3品所蔵しているそうだ。この絵師についても、もっと詳しく知りたい。


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橋本雅邦『龍虎図屏風』。明治以降の近代絵画で初の重要文化財指定作品。思った以上にマンガちっく!そして発色が素晴らしい!

描かれた当時は斬新な表現だったせいか、出品した第四回内国勧業博覧会では残念ながら落選。ベースにあるのは雪村の作品なのに。と語っていたのは河野館長。


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海野勝珉『天燈(燈台)鬼・鉄鉢鬼・龍燈鬼』

こちらは静嘉堂文庫の二階に、調度品として飾られていたものらしい。

今回の展覧会は、飾物ではあるけど、普段使いぽい、用の美を感じる作品が印象に残った。

 

ロビーに飾られている作品は、通常も撮影可能だそうです。


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鈴木長吉『鷹置物』

鈴木長吉といえば『十二の鷹』が代表作で、これも東京国立近代美術館工芸館でこの前見られたけど、あれも一時期行方不明だったという。実物を見たら、こんなド迫力の作品がどうして?って思ったんだけどね。

こちらは一羽のソロ作品。ここでも見られて嬉しかった。

 

そうそう、本展覧会では伊藤若冲の『動植綵絵』を綴織りにした作品も展示されていて、これは1904年に開催されたセントルイス万国博覧会に出品された作品の再現品なのだけど、オリジナルは事故で消失してしまったようなのだ。

会場では動植綵絵を模写した下絵や、織下絵が展示されている。これが見られるだけでも有難い。

 

明治時代でも、アメリカに打って出る際に選んだのは、琳派でもなく狩野派でもなく、若冲だった!やっぱりアメリカでは若冲が受けると、当時の日本人も分かってたんだな。

 

こうして見ていると、明治以降に作られた作品も結構、消失したり、行方不明になっているものが多いのだなという事を、改めて思い知らされた。ていうか、写真等複製技術の発達によって、今は無い作品の残像を見る事が可能になったのが、明治から始まったという事なのか。

 

それから修復以来初公開となる河鍋暁斎の『地獄極楽めぐり図』も大公開している。

全40図からなる大作なので、ここだけは4期に分けて公開している。スケジュールは下に詳細を書き加えました。

 

いつもの事ながら見所がいっぱいなので、とっ散らかった紹介になってしまいました。今回も、静嘉堂文庫のコレクションの充実ぶりにやられっ放しだったという事で、ここでひとまず〆ます。

 

※途中展示替えもあります。

 

(2018/07/22追記)

河鍋暁斎『地獄極楽めぐり図』展示替えスケジュール。

河鍋暁斎「地獄極楽めぐり図」(展示№13)の画帖は、日本橋大伝馬町の大店、小間物問屋の勝田五衛が明治2年に14歳で亡くなった娘・田鶴(たつ)の供養のために、暁斎に制作を依頼したものです。あの世に行った田鶴が、阿弥陀如来に守られながら、冥界ツアーを楽しんだあと、極楽往生するまでの旅の様子が描かれています。
全40図のうち、物語部分35図を会期中4期に分けて場面替えいたします。

・7/16(月・祝)-7/26(木)・田鶴の臨終と来迎、羅人宮、三途の川の渡し舟に乗る等
・7/27(金)-8/9(木)・賽の河原、旅館はりやま到着、田鶴の身支度等
・8/10(金)-8/23(木)・家族との再会、芝居小屋、盛り場等
・8/24(金)-9/2(日)・地獄見物、閻魔大王、極楽行きの汽車、極楽往生

 

『―明治150 年記念― 明治からの贈り物』展 展覧会情報
  • 会 期:2018年7月16日(月・祝)~9月2日(日)
  • 休館日:月曜日(ただし7月16日は開館)
  • サマータイム開館時間:午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
  • 入館料:一般1,000円、大高生700円、中学生以下無料

    ※団体割引は20名以上
    ※リピーター割引:会期中に本展示の入館券をご提示いただけますと、
     2回目以降は200円引きとなります。