「士 サムライ―天下太平を支えた人びと―」展
江戸東京博物館では現在、『士 サムライ ―天下太平を支えた人びと―』展が開催中です。
前期展示は10/6まで。現在は後期展示です。
後期展示の特別内覧会に招待されたので、行ってきました。
※画像は特別な許可を得て撮影したものです。通常は一部スポットを除き、撮影禁止です。
サムライというと自分なんかは、
『男はサムライさ〜、食わねど高楊枝さ〜』(byドビッシャー男)
と、髪を掻きむしりながら猛々しく歌う、エレカシ宮本の姿が思い浮かんじゃったり…。
或いは、いつも腰に刀を差しているちょんまげ頭の人。すぐに切腹しちゃう人。お上には土下座してペコペコする人?…
なんて、ありきたりなイメージしか思い浮かばなかったのですが、この特別展を見たら、結構目からウロコでした。
この特別展では、現代のサムライイメージを確立したとされる、江戸時代のサムライ(士)の仕事ぶりや生き方等が多角的に紹介されています。
今までサムライに興味が無かった人も、これを見れば、江戸時代のお侍さんって、案外親しみやすいキャラクターなんだなと、思われるはずです。
先ずは、江戸の世に、いかにサムライが庶民の生活に溶け込んでいたかが分かる図から紹介します。
両国、上野界隈の花見図。
満開の桜を見に、多くの人で賑わっている光景が描かれているのですが、その中に、腰に刀を2本差して歩いている人があちこちにいます。その人こそが武士(サムライ)。すぐそばには刀を1本だけ差している人も描かれていますが、その人は武士の御供。と、ちゃんと描き分けられているのです。
絵として特に面白かったのが、『雑兵』と呼ばれる身分の低い歩卒を、役割ごとに描き分けた絵巻でした。
この、『諸卒出立図鑑』では、陣笠や胴の仕様が細かく描き分けられています。これによって雑兵の身分の違いが分かるようになっています。
この辺の描写は丁寧でいいのですが、何となく足の描写がヒョロヒョロしているのが気になりました。存在が軽いっていう事なのでしょうか?
天下泰平の江戸の世で、兵士が起源とされる武士に任された重要な任務は、災害時の緊急出勤でした。
火事装束の数々も出品されています。
これは何と女性用の火事装束だそうです。
今回はサムライがテーマなので、女性の存在はクローズアップされていないのですが、次回は是非、江戸時代に活躍した女性達を紹介して貰いたいなと、この装束を見て思いました。
他に、武士の勤めとして外せないのが、大名家臣が江戸に定期的に居住する『参勤交代』。
これは参勤明けで帰国間近の武士が、突如仕事を命ぜられ、帰国が延期になったので、やけになって暴飲暴食で暴れるの図。刀もその辺にぶん投げてあります。まるでどこかの酒場で、やけ酒をあおる現代のサラリーマンみたいじゃないですか!
幕末の三舟 ― 勝海舟・高橋泥舟・山岡鉄舟
江戸時代の中で、最も熱く語られる時代は幕末ではないかと思います。
この時、「江戸無血開城」に尽力した幕臣達の中で、いずれも雅号に「舟」の字が使われていた事から、勝海舟、高橋泥舟、山岡鉄舟の3人を「幕末の三舟」「旧幕の三舟」と呼ぶようになりました。
その中では、最も知名度が高い勝海舟の所要品が数多く展示されていました。
『海舟書屋』と書かれている額は、「海舟」の号の由来となったもの。
画像は撮らなかったのですが、特に目を惹いたのが、長崎のオランダ商館長ヘンドリック・ドゥーフが著した蘭和辞典を、勝海舟が1年がかりで筆写したという『ヅーフハルマ』の写本。
これはこの前、静嘉堂文庫美術館に出品されていた『長崎ハルマ』を写したものではないですか!と、ちょっと興奮しました。
うわー人力自炊ですよこれ!しかも勝海舟は本の賃料に充てる為、この辞典を2部写して残りの1部は売りさばいたそうです。すごい!そこまでしたんだ!
こちらは高橋泥舟が銘文を書き、髑髏の絵を描いた寒山焼の茶碗。
泥舟は、武士ではあったけど、文化人ぽい人物だったようです。
フェリーチェ・ベアトの写真
幕末が面白いと思うのは、この時代になると写真が残っているからかもしれません。
江戸の人々の写真が多数展示されています。
昔の永代橋!
写真でなくても、この時代になると江戸でもこのような洋風画が描かれるようになったので、町並がリアルに想像出来るのです。
江戸東京博物館の常設展示室には、江戸時代の街並がジオラマで見ることが出来るので、この特別展を観覧する折には、是非常設展もセットで見るようにしましょう。
なお、展覧会図録は一般の書店でも入手可能です。
これはサムライを知るための資料として、かなり役に立つのではないでしょうか。
サムライ 天下太平を支えた人びと Samurai?Peacekeeping Contributors in Edo Period
- 作者: 東京都江戸東京博物館,田原昇,小酒井大悟,岡塚章子
- 出版社/メーカー: 青幻舎
- 発売日: 2019/09/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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紹介しきれないぐらい内容が盛り沢山で、面白い展覧会です。おすすめします。
開催概要