岩﨑家のお雛さまと御所人形(その1)
桃の節句も近づいて来ましたが、静嘉堂文庫美術館では1月29日から『岩崎家のお雛さまと御所人形』展が始まりました。
先日、一般公開に先立って行なわれたブロガー内覧会に招待されたので、その時の様子をレポートします。
雛人形を美術館で見る機会は限られているので、どれだけ豪華な人形が飾られているんだろう?と、いまいち想像がつかなかったのだけど、そこは三菱財閥の岩崎家が作らせただけの事はある、すんごい雛人形にお目にかかれました。
先に行われたトークショーでは、人形玩具研究家の林直輝氏と、静嘉堂文庫美術館主任学芸員の長谷川祥子氏、そしてナビゲーター役の青い日記帳Takさんが、この展覧会の見どころをたっぷりと語ってくれました。
なんでも林直輝さんは以前、人形の吉徳にいらした事があるそうで。吉徳の浅草橋店は自分の勤務先から近いので、親近感がわきました。が、ここには一度も足を踏み入れた事がない…。やはり人形の世界はちょっと敷居が高いのだよ。
そんな林さんを以てしても、人形は京都の『丸平大木人形店』が日本一だと仰られていました。でも、今回展示されている岩崎家特注品の雛人形は、現在の技術を駆使しても、とても同じレベルのものは出来ないと断言。
人形作りは、昭和初期が黄金時代だったのだ。第二次世界大戦が全てを駄目にしてしまったのか。この雛人形も、戦後の混乱で散逸の憂き目にあう。でも、今こうして無事に元の持ち主のいた場所に戻って来た。ここがお人形達にとって最も相応しい居場所なのだな。
※画像は美術館から特別な許可を得て撮影したものです。
主任学芸員長谷川さんがギャラリートークを担当してくれました。
背後のパネルは、モノクロ写真の方は岩崎邸に飾られた雛壇。カラーの方は人形愛好家として名高い、桐村喜世美氏がこの雛人形を蒐集していた時に、京都の福知山市にある邸宅で飾られていた時のもの。で、デカい…。
でもその前に、先ずは江戸時代の享保雛が、雛人形の歴史を紐解くように展示されていた。
この女雛の宝冠は、残念ながら紛失してしまったらしい。
こちらは明治〜大正時代の内裏雛。男雛は黒い装束姿。黒は天皇が身に着ける色だというのは、当時の庶民も認識していた。しかし、お后様がこんなゴージャスな宝冠を被るシーンは無かったらしい。
お雛様のコスチュームは、庶民達が高貴な方々の御姿をイメージした、そのものズバリのかたちなのだ。だから、実際の姿と食い違っていても問題ないのだ。
そしてこれが『岩崎家雛人形』の内裏雛。何と稚児雛なのだ。そしてサイズ感も、前に展示されていた内裏雛よりも一回り以上大きい。
江戸時代の雛人形は、目の部分が手描きだったのに対し、こちらは目に硝子玉が入っている。そのため、表情が無茶苦茶リアル!
岩崎家の男雛は柿色の装束。この色は天皇家でいうと皇太子のみが身に着ける色なのだが、何故かこうなっている。そして、男雛と女雛の並びが逆になっている。これは西洋的な男女の並びが流入してきた影響によるもの。
男雛の腰にさしてある飾太刀の細工も手を抜いていない。刀剣ファンにとってはこの辺もチェックポイントなのかな。自分はちょっとスルーしちゃったんだけど。
そうそう、この雛人形は何と関節人形なのだ。別にポーズを変える必要も無い筈なのに。着せ替えさせるのが目的だったのかも。関節人形っていうとハンス・ベルメールか四谷シモンか?って、自分なんかは思っちゃうんだけど。
と、話はズレましたが、雛人形のコスチュームは、今年はちょうど元号が変わるにあたって数々の式典が行われる予定なので、それを見て、皇族方が着用する衣装と、この雛人形の衣装とがどのぐらいマッチングしているかチェックしてみるのが面白いのでは。
三人官女に五人囃子。仕草や表情一つ一つがリアルに作られていて、見応えがある。
なんでもこのお雛様一式のお値段は、現在の貨幣価値に当てはめると二億は下らないとの事。
岩崎小彌太は、これまでにない雛人形を作って欲しいと、丸平大木人形の五世大木平蔵に依頼したらしいです。昔の富豪は今とはスケールが違うなぁ。
そのおかげで、我々も今こうして最高峰の手仕事を見る事が出来るのだ。ありがたい事です。
一旦ここまで。まだ続きます。
開催概要
会期:2018年1月29日(火)~3月24日(日)
休館日:月曜日(2月11日は開館)、2月12日(火)
開館時間:午前10時~午後4時30分(入館は午後4時まで)
入館料:一般1,000円、大高生700円、中学生以下無料
※団体割引は20名以上
※リピーター割引:会期中に本展示の入館券をご提示いただけますと、2回目以降は200円引きとなります。
※本展会期中、「三井記念美術館との相互割引」があります。
ウェブサイト:静嘉堂文庫美術館