昔のファッション雑誌(その3)
今回は記憶発掘編。
マリ・クレール
マリ・クレールはフランスで1937年に創刊された歴史あるファッション雑誌。でも、ここで取り上げるのは中央公論社がライセンス契約をしていた頃のマリ・クレール。更に1980年代半ば以降の数年間限定です。
なのに、手元に雑誌の形で残っているのは、この1995年2月号のみ。誌面は80年代のものと大差ないのに、中身は似て非なるもの。「覚醒後」と言ってもいいかも。それでも読み応えは十分なのですが。
これ以前の号は主要記事のみをスクラップして処分しちゃいました。しかも、せっかく時間をかけて切り取ったのに、何の手違いかそれすら一部消え失せました。
というわけで、今回は手元に残った記事と記憶を頼りに書いてみることにします。
ネットのデータによると、この雑誌が中央公論社から出ていたのは1982年7月〜1999年7月。当初は全然売れず廃刊寸前だったらしいのを、名物編集者であった安原顯の意向で書評欄を新設したら、当時流行っていたニューアカ的なセレクトが受けたのか、一気に売れ出したそうです。安原顯が副編集長を務めていたのは1984〜1991年。この頃が一番、「乗っていた」のではないでしょうか。
私が買っていたのは1987年から3年程度かな。毎号ではなかったです。
月を追う毎にどんどんページが増えていった記憶がある。でも「特別定価」の名目で、価格は据え置きだった。(←間違ってたらすいません!)流石バブル景気の底力!バブルの恩恵はこういう所で味わってたんだ。と、今になってみてそう思う。でもこのズッシリ感にうんざりして、早々と処分しちゃったというのもある。
書評欄はさておき、この雑誌は特集ものや連載読み物が凄かった。
ジャン・コクトー大特集では、ジャン・マレー、エドゥアール・デルミ(デルミット)、2人の「息子達」による、今となっては貴重な対談が実現。他の人では知り得ぬコクトーの素顔が語られている。
荒俣宏のお手製本。連載「紙の極楽」(asin:4122027985)より。本を買う金がないなら借りて来て写しちゃえばいいという発想で作られた、ロード・ダンセイニ「時と神々」の写本。布選びのセンスがステキ。しかしこの根性にはただただ脱帽。却ってこの荒俣本の方が貴重に思えてくる。
荒俣さんは今みたくTVによく出て親しみやすい(あれでも)イメージじゃなく、当時は平凡社ライブラリーに生息する(要するに寝泊りしていた)、不気味でヤバい存在だった。
あと好きだったのが、淀川長治、蓮實重彦、山田宏一の「映画千夜一夜」(asin:4122035740,asin:4122035759)。なんでも淀川さんは、名物編集者安原顯の事がお気に入りだったらしい。って、それはいいとして、連載小説は吉本ばなな(当時)、小川洋子など、当時若手だった作家を積極的に採用。この辺はファッション誌でもおかしくないんだけどね。
当時ロッキングオンではこの雑誌の事を「女装する文芸誌」と評していた筈。確かにファッション写真は目くらましにしか見えなかった。
でもやっぱり強く印象に残っているのはファッション関連の記事。ココ・シャネルの事を詳しく知ったのはこの雑誌でだった。「ココ・シャネルの星座」(asin:4122019575)という連載が印象深い。
カール・ラガーフェルド
80年代前半当時はいまいち地味だったシャネルブランドを、一気に盛り返したのがこの人。この雑誌の特集で初めてこの並外れた人となりを知った。
3歳頃のカール。この年にして子供嫌いだったそうで。こんな3歳児会いたくないよ〜!
カールの事をネットで調べてみると、1933年生まれと書いてあった。公では1938年生まれという事になっているし、この記事でも1938年生まれという前提で書かれているのだが、読んだ当時から、年代の整合性に不自然な点があるなと、漠然とだが思っていた。例えば4歳から14歳まで戦争を避けて、デンマーク国境近くの酪農場付近にある大きな家に住んでいたという箇所。これは1937〜47年の事と考えた方が納得がいく*1。なんて、こんなツッコミしてたらカールさんに「そんな細かい事にいちいちこだわるな!」と、激しく喝を入れられそうだ。
このカール特集を構成したのが小指敦子というファッション・ジャーナリストで、この記事の他にもマレーネ・ディートリッヒ特集とか、非常に読み応えのある記事を書いていました。
残念ながら既にお亡くなりになられていたようです。もっとこの人の書いたものが読みたいなと思ったので、過去に署名記事を書いていた雑誌のうちの一つ、セゾン・ド・ノンノ(これで繋がった!)をずっと追っているのですが、なかなか記事の方は容易には見つかりません。
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唯一?の著作本。
*1:あ、でも1937年だとまだドイツでは戦争が始まってないのか。うーむ…