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この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

謎のデザイナー 小林かいちの世界

@ニューオータニ美術館


この展覧会は、「謎のデザイナー」というタイトルが利いているのかも。なんて書くといまいちな内容だったと思われるかもしれない。確かに見た直後は地味な印象を受けた。木版画は抑えた色数で刷られていて、なんだか渋い。しかし、妙に後を引く世界なのだ。

甦る小林かいち―都モダンの絵封筒

小林かいちは1920〜30年代にかけて京都で活躍した図案家。近年にわかに脚光を浴びているそうなのですが、私はつい最近知りました。タイトル通り、まだまだ謎の多い人なのです。


作品の殆どが絵葉書、絵封筒といった小さなサイズのものだった。昔は、葉書にしろ封筒にしろ、今のものよりひと回りは小さい。その中に、痩身で長身の若い女性が顔を伏せるポーズで佇んでいて、周りに草花等をパターン化したモチーフがスタイリッシュに配置されている。
モチーフも、ハート、トランプ(それもハートのエース)、外灯、洋館、廃墟(!)、蝶、十字架、鍵、楽譜等々…。乙女心をくすぐるものばかり。あと、クロスワードパズル(の升目)。
この時代にクロスワードパズルが流行っていたというのはこの本を読んで知った。

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現代思想臨時増刊「総特集 1920年代の光と影」

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ラジオというメディアが登場したのもこの頃。郵便といい、通信手段が段々と高度化され、葉書、封書もああいった濃密なデザインのものが生み出されていったのか。

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ちなみに、日本でラジオ放送が始まったのは1925年。
放送開始直後には、かの泉鏡花大先生も御出演なさっていたようです。うわー聴きたかった!


この増刊号が発行されたのは1979年。丁度80年代に突入した頃から1920年代に注目が集まり始めた筈。
でも日本に於いての20年代というと、どうしても関東大震災直後の、復興都市東京中心の視点になる。確かに今回の展覧会でも「震災復興葉書」なるものが展示されていて、震災の影響力の大きさを如実に物語っていたのだけれど。しかし、小林かいちの作品は、関西側からの視点が具体的な形を伴ってこちらに迫って来た感じがした。パッチワークのピースが上手くはまったような。中央に鎮座するのが竹久夢二だけじゃ何だか物足りなかったんだよな、今まで。これからもっと作品が発見されれば、よりあの時代の多彩な美意識が見えて来るのではないか。

*1:この画像のみ雑誌太陽No.325より