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この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

『生誕100年 小山田二郎』展

生誕100年 小山田二郎 東京都府中市ホームページ

現在、小山田二郎(1914-1991)の生誕100年を記念して、彼が1960年からアトリエを構えていた府中市で、没後3度目となる回顧展が開催されている。

小山田二郎は、先天性ウェーバー氏病による、特徴的な容姿を持っていた。少々グロテスクで、普通の人間として生きていくには恐らく困難を伴ったであろう。そして、人生の途中で失踪して隠遁生活を送り、その状態のまま亡くなったという、特異な人生を歩んだ。

こんなバックグラウンドから、ニヒリスティックな世界を持った作品を想像してしまったのだが、作品自体は、確かに壮絶な凄味のある、一度見たら忘れられないような世界を数多く生み出しているが、シンメトリックでキチンと水平な構図で描いている作品が多いせいか、鑑賞していてもぐらっと平衡感覚を失うような事がなく、安心して見ていられた。それに、描かれているキャラクター等には、どこか可愛さがあってユーモラスだった。

実は小山田二郎個人の展覧会を見たのは今回が初めてだった。
展覧会を見る直前に、20分間のスライドレクチャーを聞く事が出来たのだが、そこで強調されていたのは、水彩画が素晴らしいという事だった。
最初に神田にあったタケミヤ画廊で、瀧口修造の勧めで個展を開催した時も、油彩画より水彩画の方が高く評価されたようだ。
幼少時に日本画家である小堀鞆音(こぼりともと)の手ほどきを受けていたそうで、卓越した技術は早くから培われていたのだが、それでも、これ、いったいどうやって描いたんだ?と思う独特のグラデーションや光沢の美しさがあった。そしてこちらの胸の内を熱くするような、描かれた人物やキャラクターの、光を湛えた眼差しが生き生きとしていた。

見ているうちに何だか自分も、とっくに描くのを諦めていた水彩画を再開してみようかという気になっていた。こういう絵を自分でも描けるんだろうか?ちょっとチャレンジしてみたい。

こんな気分になったのは本当に珍しい。エミール・ノルデの水彩画でもこうはならなかったのに。


現在の展示は第一部で、来年1月10日からは第二部が始まる。大幅な展示替えが行われるようなので、第二部も見に行くつもりです。