ターナー 風景の詩(うた)
京都、東京、郡山の3都市を巡回するターナー展が、 現在東京で開催中です。
先日、一般公開に先駆けて行われた、プレス内覧会に参加する事が出来ました。
※画像は美術館より特別の許可を得て撮影したものです。
ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775-1851)は、英国で最も偉大な画家と讃えられている。
日本でも昔から人気が高く、国内でもターナー展は決して少なくない頻度で開催されてきた。
自分がこうした、ブロガー向けの内覧会に応募するようになった初期の頃にも、ターナー展の内覧会が開催されていて、それにも参加した。もうあれから5年近く経つのか。恐ろしい!一巡したかのような感覚だ。
自分にとっても、ターナーの絵は割と見る機会に恵まれていたので、ターナーについては知ってるつもりになっていた。
が、決してそうではなかった!
本展の特徴は、エディンバラ、スコットランド国立美術館群等、英国各地と日本国内で所蔵するターナー作品が、出品されている事だ。
今回英国からやって来た作品の殆どは、日本初公開なのだ。
エディンバラ市街地の風景画について語る、スコットランド国立美術館群、総館長のジョン・レイトン卿。
今回は水彩と版画による風景画が、出品作の大半を占める。
『スノードン山 残照』について熱く語っているところ。
この作品はイングランド人のターナーが、ウェールズに行ってスノードン山を描き、それが今では何故かスコットランド国立美術館に所蔵されている。なんて事を言ってましたが、とにかくこれは、夕暮れ時に一瞬見られる光を捉えた素晴らしい作品。
ターナーはこの光を表現する為に、親指の爪で画面を削って、ハイライトをつけていたのだ。その手法は、スクレイピングアウトと呼ばれている。
ターナーはこの技法を駆使する為に、親指の爪をいつも伸ばしていたという。
今回の展覧会では、キャプションに細かく技法も書いてあるので、そこも注目してみて下さい。
スクラッチングアウト、ストッピングアウト、ウォッシュ(にじみ)etc…。これらの技法は、いずれも光を表現する為に駆使していたのだ。
英国の天候は移ろいやすい。水彩絵具はその繊細な光の表現に適した画材だったのだ。
1901年に、個人蔵だったターナー・コレクションが、スコットランド国立美術館に寄贈されたのだが、その時寄贈主が条件にしたのは、これらの水彩画は1月のみの展示に限るという事だった。何故かというと、その月が1年のうちで最も日照時間が短くて、絵具の退色が免れるから。
美術館はその忠告を忠実に守り、毎年1月にのみ、ターナーの水彩画を展示しているそうだ。
展覧会は以下の4章で構成されている。
- 地誌的風景画
- 海景 -海洋国家に生きて-
- イタリア -古代への憧れ-
- 山岳 -あらたなる景観美をさがして-
ターナーというと、モネを始め、後の印象派に影響を与えたとか、20世紀抽象画の巨匠、マーク・ロスコも彼に大きな影響を受けたとか、絵画表現の先駆者としての側面が強調されがちなんだけど、今回の出品作を見ると、彼は実際現地に赴き、風景を正確に記録する事が、自分の使命だと思ってたんじゃないかな。
まあ、実際ターナーは、かなりの変人だったようだけど。
産業革命によって交通網が張り巡らされ、あらゆる場所に移動する事が可能になり、各地の風景を記録するニーズが高まってきた。
ターナーは写真を撮る様に、これらの風景をスケッチしていった。
そして、版画という複製技術を積極的に取り入れ、自身の作品を広く普及させたのだ。
『ピクチャレスク―イングランド南海岸の描写』
これはターナーが彫版師に細かく指示を出し、納得行くまで何度も刷り直しさせたという。
妥協の無さが、見て取れる。
この辺のエッチングを見ていると、一瞬19世紀の風景写真に見えて来る。
写真技術を開発した人は、ターナーみたいな風景画を描く事は到底無理だから、躍起になって、彼の生きているうちに、実用化させたんじゃないかな。
会場の落ち着いた雰囲気もたまらなく良いです。
秀作揃いなので、是非見に行って下さい。お勧めします。
展覧会概要
- 会 期:2018年4月24日(火)~7月1日(日)
- 休館日:月曜日(ただし4月30日は開館、翌5月1日も開館)
- 会 場:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館 (住所/新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン日本興亜本社ビル42階)
- 開館時間:午前10時~午後6時 ※入館は閉館30分前まで ただし5月9日(水)、16日(水)、6月26日(火)~
30日(土)は午後7時まで - 観覧料:( )内は20名以上の団体料金および前売料金
- 一 般:1,300円(1,100円)
- 大・高校生:900円(700円)※学生証をご提示ください
- 65歳以上:1,100円 ※年齢のわかる物をご提示ください
- 中学生以下:無料 ※生徒手帳をご提示ください
- ※身体障害者手帳・療育手帳・
精神障害者保健福祉手帳を提示のご本人と、その付添人1名は無料。 被爆者健康手帳を提示の方はご本人のみ無料。 - 主 催:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館、毎日新聞社、スコットランド国立美術館群
- 協 賛:損保ジャパン日本興亜、大日本印刷
- 後 援:ブリティッシュ・カウンシル
- 協 力:日本航空 一般お問合せ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
- ホームページ:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館