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この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

奥村靫正展 「第2回奥村祭り」

@クリエイションギャラリーG8, ガーディアン・ガーデン


奥村靫正の、デヴュー当時から現在までに手がけた代表的作品を一望し、その全貌を垣間見る展覧会。
5月31日まで。


第一会場であるクリエイションギャラリーG8の方は、YMO祭りと言ってもいい展示内容だった。
会場で、それらを懐かしそうに熱く眺めるYMOチルドレンから漏れ出てくる会話を注意深く聞いていると、80年代キーワードのオンパレードだった。
しかもそういう人達の服装って、あの当時のデザイナーズブランドの服みたく見えるんだわ。


お客さんの中には、仕事中なのか、部下らしき若者社員たちを引き連れているYMO世代のおっさんもいたのだが、何も知らない部下にYMOの人達を説明するのに、「優秀な人達」とか、「学歴がすごい(坂本龍一の事か?)」とか、経歴・学歴方面からのアプローチで紹介しようとしていて、がっくしだった。
と同時に、YMOが登場してから30年をゆうに超えるのだが、その間にどう音楽が進化していったかというのを、誰でも分かりやすく的確に説明出来るような文脈が、まだ全然確立されていないんじゃないかと思ったりもした。
いや、日本のポピュラー音楽って、そうやって語れるぐらい果たして成熟したんだろうか?
なんて事を考えるのに、この展覧会の空間はピッタリだった。


奥村氏のインタヴューの中ですごく気になったのが、戦後生まれの僕らの世代は、戦争も知らないし、バウハウスやモダニズムのような大きなムーヴメントをリアルタイムで経験していないから、モダニズムを父にたとえると、父のいない母子家庭で育ったようなものだ、と言っていたところだった。


ムーヴメントのない所から出発している。それは、1980年代前半に漂っていた“気分”にも呼応するものではないか。熱き1960〜70年代に青春時代を送った者にとっては、80年代は悪夢のようなふやけた時代に映っているようだが、80年代に多感な時を過ごしたわれわれは、過去の歴史の中で起こった面白いムーヴメントを、あの当時熱中して拾い集めた。そのヒントは奥村氏のデザインに、さり気なく仕込まれていたりもした。奥村氏の作品を観ながら、あの当時ここから何を読み取ろうとしていたのかを、暫く思い出し続けていた。内向きではあったかもしれないが、あれはあれで、面白い時代だった。