[世界を変えた書物]展
上野の森美術館で明日まで開催の、この展覧会に行ってきた。
「本好きなら見ておくべし!」という煽り文句に釣られて、隙間時間に足を運んだのだけど、すげー知の連鎖にアップアップと溺れ続け、気付いたら時間切れ…。消化不良!
なので、ここに書くのを躊躇ってしまったのだけど、メモ書きとして残しておきます。
入場無料で、展示室内撮影OKって、凄い太っ腹!
この空間構成が美術館らしからぬ雰囲気。
序盤は建築書の美本が並ぶ。
これはジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージの「古代ローマの廃墟及び建築物景観」。ピラネージはいつ見ても心躍る。
ここに刺さっている書物を、手に取って見たい衝動に駆られる。
この書庫を抜けると、「知の森」と銘打った、メインの展示空間へと進むのだが、ここからは一気に“理系”の書物が、カテゴリーに沿って一冊づつガラスケースに収めて展示されている。
この辺は、残念ながら流し見してしまった…。
それでも、気になった書物を幾つか挙げてみる。
ルネ・デカルト『哲学の原理』。
これはまるで点描画のようだ。見入ってしまった。
ピエール・キュリー、マリー・スクウォドフスカ・キュリー『ピッチブレンドの中に含まれている新種の放射性物質について』
マリー・スクウォドフスカ・キュリー『放射性物質の研究』
これは、書いてある中身というよりも、鏡に写った装幀の方に目が行った。
やはり、女性が関わった書物だとエレガントになるのかな?と思った。他の書物とちょっと印象が異なった。
以下は東京展特別出展の書物。
ガイウス・プリニウス=セクンドウス『博物誌三十七書』
プリニウスというと澁澤さんを思い出す。
ジョルジョ・ヴァザーリ『最も優れた画家、建築家の生涯』
これが見られたのは嬉しい!開かれているのはラファエロの項か。
これら稀覯本の作者は、学校の教科書に登場する偉大な人物達なので、馴染みはある。あるのだが、名前だけ。
しかしひと通り展示室を見て回り、休憩のつもりで映像シアターでかかっていた、本展監修者の竺覚暁氏のミュージアムトークを見出して、印象が一変する。
この展覧会で展示されている本は、この方が長年に渡ってコレクションしたものなのだ。なので、この方がある程度“知の連鎖”を構成していて、その連鎖を立体的に可視化したのがこの展覧会なのだ。
あの映像、展示されている本を前にジェスチャーを交えて語っているだけなのに、どんどん知が連なっていく感覚がダイレクトに伝わってきて、ああ、ヨーロッパの近代は、アリストテレスが翻訳可能になったから始まったのだな、とか、その他色々(端折ってます)、自分にとっての知的発見があって面白かった!でも残念ながら全編通しては見られなかった。
知を可視化した展覧会といえば、昔見た梅棹忠夫展を思い出したし、初版本であり美本にこだわったといえば、鹿島茂が監修した一連の展覧会も思い出したりもしたんだけど、今回の展覧会は、人間が根源に持っている、不可思議で難しい事を知りたい!という欲望を、微かにだけど叶えてくれる内容になっているのではないか。
映像は、年代を問わず、多くの人達が熱心に見入っていた。それが強く印象に残った。