バーナード・ルドフスキー
バーナード・ルドフスキー(1905-1988)は、建築界ではよく知られた存在なのだろうが、自分はこの名前を目にしても、ちょっとピンと来なかった。
しかし、この人の代表作とも言える『建築家なしの建築』という書物は、以前図書館から借りてきて読んだ記憶がある。
また借りようかと思ったら、既に除籍になっていた。残念。
これは最近出版された本格的な評伝。
ルドフスキーの全作品が紹介されている。
読んでビックリしたのが、この人はファッションデザインも手掛けていたという事。
特にサンダルのデザインは、7〜80年前に作られたものとは思えない程モダンだ。
MoMAで、『衣服はモダンか?』展のカタログがDL出来るのだが、これの図版が見応えあり過ぎ!
とりあえず文章を読むのは後回しにして、PDFをkindleに入れて、図版を眺めている。
この展覧会が開催されたのは、第二次世界大戦中の1944〜45年にかけての事。
時勢に鑑みて開催されたとの事だが、展示品の多くが写真や複製物であるにも関わらず、空間構成の巧みさにすっかり魅せられてしまった。とてもこの時代の展覧会とは思えない。
MoMAで開催されたルドフスキーの展覧会は、以下のリンク先から会場の雰囲気やカタログ、プレスリリース等が閲覧出来るようになっている。
Internet Archiveで読めるルドフスキーの本。
ルドフスキーの著作の大半は、既に40年近く前までに翻訳されているし、日本文化に造詣が深い事でも知られているのに、日本人でルドフスキーについて今熱く語っている人が余りいないのは、寂しい。
この本を書いたアンドレア・ボッコはイタリア人だ。
ルドフスキーの活動を見ていて思い出したのは、以前三菱一号館美術館で見たマリアノ・フォルチュニ展だった。彼もイタリア人だ。
イタリアには、「人間のためのデザイナー」を意味する『プロジェッティスタ』という言葉があるそうだ。
ものをデザインするのに分業という手段を取らず、制作からプロデューサーまで総合的に道筋をつけて、ものとして完成させる人々がいたのだそうだ。
現在のイタリアでは、この伝統は廃れつつあるようなのだが、アンドレア・ボッコはこの系統を引き継ぐ者として、ルドフスキーをかけがえのない同士として仰いでいる。
自分もこういう、ジャンルの垣根を取っ払った、生きているものを中心に据えるものづくりをする人には、大きな魅力を感じるのだ。
今回はここまで。