この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界

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 三菱一号館美術館は、現在ショーメに占領されている!

 

ショーメは1780年にスタートした、フランスで最も長い歴史を誇るジュエラー。

古くはナポレオン1世皇紀ジョゼフィーヌの御用達として、装飾芸術の傑作を数多く生み出し、伝統を重んじつつ革新性を追求し続け現在に至る、老舗ブランド。

現在三菱一号館美術館では、約240年に及ぶショーメの歴史と伝統を紹介する、日本では初の展覧会が開催されている。

 

先日開催されたブロガー・特別内覧会に招待されたので、参加してきました。

 

キラキラ好きじゃなくても圧巻!

女性というものはキラキラを目にすると、わぁーっ!とそこに向かってにじり寄る習性を持っている…筈なんだけど、残念ながら自分はそういう感覚が希薄だ。多分、『ショーメ』というブランド名を口にしたのも、今回が今までの生涯を通じて初めて。そのぐらい、ジュエリーブランドに関しては無頓着だった。

 

というわけで、ティアラにも宝飾品にもときめかない、醒めた観点からこの展覧会をレポートしようと挑んだのだが…。

 

※画像は主催者の許可を得て撮影しました。

 

内覧会では、高橋明也館長、岩瀬慧学芸員、そして『青い日記帳』のTakさんが進行役で、ギャラリートークが行われました。

 

 ショーメの展覧会は去年、中国紫禁城故宮博物院で大々的に開催されている。フランスと中国は、お互いに皇帝国家だったのか。そういえば。

中国では展示スペースが広大だったので、ワンフロアでぐるっと歴史を辿る展示方法をとったようだが、ここ三菱一号館の展示スペースは、幾つもの小部屋に分けられているので、北京ヴァージョンとは展示テーマから何から根本的に異なるそうだ。

館長さんは日本ヴァージョンの方が、緑が生い茂るコンパクトな美術館のお陰で、ずっと繊細な構成になったと満足げでした。

 

とは言っても、展示は伝説の始まりであるナポレオン1世ゆかりの品々から始まる。

 

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皇帝ナポレオン1世と最初の妻ジョゼフィーヌ肖像画

この展覧会はジュエリーだけでなく、絵画作品も見応えあり。

そして警備員の人数が、通常の絵画展より多いのが特徴。


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 『皇帝ナポレオン1世より贈呈された 教皇ピウス7世のティアラ』とそのデザイン画。

今回の展示はこのデザイン画がどれも素敵だった。

こういうのを後世に伝える為にキチンと管理している所が、ショーメのショーメたる所以か。

ティアラはヴァチカンから直接お借りしたもので、こんな機会がなければ見られない逸品。

 
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『麦の穂のティアラ』

麦の穂は農耕を司る女神ケレスのアトリビュートで、繁栄と多産の象徴とされていた。

これは皇妃ジョゼフィーヌが着用していたティアラ。この展覧会のシンボル。


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麦の穂はこんな風に、展示室のアクセントとしてあちこちに登場する。

 

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美術館の1番広いスペースに展示されているのは、ティアラ!ここは通常も撮影可能。

ゴージャス過ぎて何も言えませんわ。

 


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麦の穂だけでなく、ショーメは自然界に存在するあらゆる動植物をモティーフにした。

こちらは19世紀のデザイン画をアニメーションにしたもの。

展示方法も、隅々まで凝っている。

展示デザインを担ったのは、ビュロー・べタック社という、普段はファッションショーを手がける会社のようだ。


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この部屋は、新旧のデザインが混在している所が面白かった。時代時代で、ジュエリーの輝きが異なっている。

ギャラリートークでは、石の輝きだけでなく、台座の方にも目を向けて欲しいと仰ってました。

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『タコのネックレス』

これはユニーク!1970年制作だそうで。あの頃の時代感覚が何となく想像出来る所が面白い。


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宝飾品にはときめかないと言ったけど、アール・デコ期のファッションにはときめく!

これはショーメのティアラを身に着けた前田菊子公爵夫人の写真。

このティアラは、ストマッカー(胸飾り)としても使えるようにデザインされたものらしい。

 

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これもアール・デコ期に作られたヘッドバンドだけど、このようにネックレスにもなる。

なんていう映像解説もあったりする。

 

 

最後の展示室は、ショーメと日本とのコラボ。

 

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ジャポニスムのブローチ『雷神』

これはジャポニスムの全盛期である1900年頃に作られたもの。

当時出版されたサミュエル・ビングの『芸術の日本』を見て、着想を得たものか。

『なんちゃって日本』の、最たる作品とも言える。


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いやもうね、途中何処にいるんだか分からなくなるぐらいに現実逃避出来ましたよ。宝飾品なんて基本小さなものなのに、どうしてここまで大がかりな世界観で畳みかけるんだよ!と、思ったりもしたんだけど、ジュエリーは人が身に着けて動かすものなのだ。空間も動かすし、人の思惑も動かすし、時代も動かす。

ここにあるジュエリー達も、修復したりリメイクしたりで、決して作った当初のままで残っているわけではない。でもそれで価値が下がる事も無い。

今迄ジュエリーが美術品として評価されなかったのは、流動性のあるものだからだったのか。でもそれこそがジュエリーの最大の魅力だという事を、この展覧会は雄弁に語っている。

しかし作品は全てガラスケースで厳重に覆われているので、触る事は不可能。当たり前だけど。

 

素晴らしい企画だと思います。おすすめです。

 

「ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界」展覧会概要

 ※金曜、第2水曜、9/10~13は21:00まで
 ※入館は閉館の30分前まで

  • 休館日:月曜日(但し、9/10、9/17と、トークフリーデーの7/30、8/27は開館)
  • 料金:一般1700円、高校・大学生1000円、小・中学生500円
  • アフター5女子割:第2水曜日午後5時以降/当日券一般1000円(女性のみ)
  • https://mimt.jp/chaumet/