没後30年 鴨居玲展
東京ステーションギャラリー - TOKYO STATION GALLERY -
最終日ギリギリに駆け込んだ。
鴨居玲は没後、節目の年ごとにどこかで展覧会が開催される、人気のある画家だ。
とは言っても、東京都内で開催されるのは25年振りだったようで。多分わたしが鴨居玲の存在を知ったのもその頃だ。
初めて作品を見たのは横浜のそごう美術館でだった。もうあれから5年も経つのか!
鴨居玲の作品を目にすると、日本人が描いたように見えない時が多々ある。なので、今回の展覧会が、彼の出身地である金沢市絡みで企画された事に、どことなく違和感が。北陸新幹線開通記念で、これを見に金沢にいらっしゃ〜い、って!?
鴨居玲の絵からは、どちらかと言うとレンブラントとかベラスケスとかゴヤといったヨーロッパ人の名前を思い出す。所謂『日本人離れ』した人のイメージで捉えていた。
でも、今回の展覧会で金沢のルーツが見い出せたかな。特に初期の頃の絵はきらびやかな色調が印象的だった。
今回はデッサンが見応えあった。その、日本人離れした身体で生み出す線がダイナミックで、自分じゃこうは描けないよなと思った。
展示をひと通り見終わってミュージアムショップを覗いたら、『蜘蛛の糸』のポストカードが売られていた。そういえばこの絵は今回展示されていなかった。ちょっと残念。
鴨居玲が生きていた時に彼の作品を知る機会はなかったのだけど、彼の活動していた時代については自分も存在していたから何となく分かる。晩年は自殺未遂を重ねていた事もあり、周りからは疎まれていたんじゃないのかな?でも結局は自殺によって命を落としてしまった。そして、彼を高く評価していた坂崎乙郎も、後を追うように自殺してしまった。
そこまでする人達が、昭和の末期にはまだ存在していた。その追い詰められる想いが、彼の絵を前にすると、ずっしりと重くのしかかってくるのだ。純度の高い理想やら何やら、文字にすると薄っぺらくなっちゃうんだけど、そういうものがあるのを確かめる為に、わたしは鴨居玲の絵を見に行くのかもしれない。