この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

電線絵画展 ―小林清親から山口晃まで―

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「電線絵画展-小林清親から山口晃まで-」 | 展覧会 | 練馬区立美術館

電気が開通した明治以降に、電線や電柱を描いた絵画を集めた、すごくユニークな展覧会だった。

 

今まで目にしてきた都市風景を描いた作品が、電線、電柱のフィルターをかけて見ると、こんなにも新たな視点が開けて来るのかと、目からうろこだった。

 

電線のあるモダンな都市風景というと、真っ先に藤牧義夫の作品を思い出したのだけど、隅田川両岸絵巻の第二巻がしっかり見られた。嬉しい!

30日以降は巻替えになるらしい。

 

岸田劉生『道路と土手と塀(切通之写生)』の別ヴァージョンあり

↓画像はこちらでご覧下さい。

道路と土手と塀(切通之写生) 文化遺産オンライン

迂闊な事に全然知らなかったのだけど、岸田劉生の代表作の一つであるこの風景画を、別の角度から描いた作品が展示されていて、ビックリした。ここには屹立する電柱とその支柱がしっかりと描かれていた!

今まで、この坂道の地面にクッキリと描かれている二本線の影の主がどのような造形をしていたのかを、全く想像した事が無かったのが、情けないやら何やらで、絵の前で暫く放心状態になっていた。

岸田劉生は、影としてしか描かなかった電柱に、実はもの凄く思い入れがあったのだ。

描いた場所は代々木で、電柱は立てられていたのだけど、周りの環境は、まだまだ電気が普及していそうにない。そのギャップを印象づけたかったのだな。

 

“ミスター電線風景” 朝井閑右衛門

この展覧会でいちばんビビッと来たのが、朝井閑右衛門の『電線風景』だった。

最初、戦前の作品が展示されていたエリアで、この人の作品が紹介されていたのだが、展示作品は小品で、洒落た雰囲気の絵だとは思ったが、それ以上に、解説文に書いてあった、“生前は頑なに個展を開く事を拒否した”という人物像に、ただならぬものを感じた。

戦後作品を紹介するエリアで、再度この人の作品に出くわし、やっぱり只者ではなかったのだと確信した。なんだ!?彼にとって電線はあんな風に見えていたのか?パランプセスト?

 

全部見終わって物販コーナーに行ったら、2016年に同館で展覧会が開催されていたようで、図録が売っていた。これ、何故か自分はノーチェックだった。狐につままれた気分だった。作品が収蔵されている横須賀美術館にも行った事があるのに。

電線が、この画家の存在をクッキリと浮かび上がらせたのか。

 

出品作家の人数もかなり多いし、他に見どころもいっぱいあるので、電線という存在にビビッとくる人は見ておいた方がいいと思います。来月もう一回見に行こうかな。


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