この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

夜の画家たち ~蝋燭の光とテネブリスム~

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展覧会紹介

 

almondeyed.hateblo.jp

福山で開催されていたこの企画展が山梨に巡回してきたので、お休みを利用して見てきた。

 

サブタイトルにあるテネブリスム(暗闇主義)とは、17世紀のバロック期にフランスのジョルジュ・ド・ラ・トゥールや、オランダのレンブラント・ファン・レインらによって描かれた、暗闇から蝋燭の灯りや炎等によって、描く対象をドラマティックに浮かび上がらせる手法の事をいう。

この企画展では、暗闇の手法がどのように日本にもたらされ、描かれていったのかを浮き彫りにするという、意欲的な内容になっている。

 

闇とか陰、或いは地下というキーワードを見ると、何故かワクワクして来る。

以前、国立新美術館で開催されていた『陰影礼賛』もそうだった。あれは写真作品も多数含まれていたが、今回の企画展は絵画のみ。殆どが日本人画家。そして、ここで初めてお目にかかるお名前の画家も多数。明治大正に活躍した画家でも、まだまだ知られざる人が埋もれているのだなというのを再確認。

日本で描かれていた肉筆画や浮世絵等は、殆ど線を主体にしていたから、西洋画の、輪郭線を消した描写法は、初めてそれを見た日本人にとってはかなり新鮮なものに映っただろう。

明治に入ってガス灯等の人工照明がもたらされると、その光と闇を、あたかも本物の様に描き出す事に、絵師達が熱中し出した。という風な流れで、作品は展示されていたかな。

江戸の雰囲気を残す女性が、西洋画の技法でドップリと暗く描かれている山本芳翠の『灯を持つ乙女』なんて堪らない。あと、ここで初めて知った日高文子の絵もその系統。一体どのような人物だったのだろう?一点のみ展示されていた『燈下夫人図』なんて個人蔵の様だから、そう滅多に見られるものではないのかも。

会場のあちこちには蝋燭が灯されていて、雰囲気を盛り上げている。

実は真夏向けの企画だったかも。納涼気分も味わえるぞ。


企画展のメインテーマは闇と光と陰だけど、思いの外、西洋画の模写作品が多く展示されていた。

面白いのは、明治の博覧会に出品された西洋画が小さく記されている浮世絵。当時の日本人がどんな外国の絵に触れていて影響されていたのか、こういう所から窺い知れる様になっていた。そしてこの絵が具体的にどの作品だったのかも判明されていた。


作品リストを見ると、甲斐庄楠音や秦テルヲといった納涼系?デロリ派の絵も入っていたが、それは後期展示という事で今回は見れず。後期は19日(火)から。会期は6月14日(日)まで。わたしにとっては凄く面白い展覧会でした。