この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

今和次郎展を見て『都市廻廊』を読んだ。

都市廻廊―あるいは建築の中世主義 (中公文庫)

都市廻廊―あるいは建築の中世主義 (中公文庫)


この本は、今和次郎が取り上げられているのに惹かれて買いました。
今和次郎の名前を初めて目にしたのは1980年代です。
当時は、「関東大震災直後に考現学という変わった事をやり出した面白いおじさん。」ぐらいの認識に過ぎませんでした。


再度気になり出したのは、今氏はかつてわたしの住んでいる場所の近くにあった「民俗学博物館」の創立にたずさわったうちの一人であるという事を知ってから。
役割は、博物館の全体構造図を描いたのと、日本初の屋外展示場でもあったので、民家の移築に尽力したのだそうだ。


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民俗学博物館の跡地に立つ銘板。
これが立てられたのは2009年だから、つい最近の話。


実は、この辺りの住人でもあった。
それで親近感が増してきた。
関東大震災がきっかけで、こちらの方に終の住処を構えたそうだ。しかし、民俗学博物館同様、今氏の住居も現在は存在しない。


今和次郎 採集講義展」にはその自邸写真が展示されていた。
結構有機的に建て増ししていたり、庭にはひょうたん型の芝生があったり、苔かなんかの植物で出来たテーブルがあったりして、すごく魅力的な住まいだったんじゃないかな。おじゃましたかった〜!


しかし、展示の最後が農婦の等身大パネルだったせいか、この人って最終的には“農婦コス萌え〜”だったんかい!と、思ってしまったのがなんとも…。


展覧会を見たのがきっかけで、去年買ったまま放ったらかしていたこの「都市廻廊」をようやっと読んだ。
サブタイトルにある「建築の中世主義」とはどんなものなのかというのを、数多くの資料を駆使して縦横無尽に語り倒している。


40年近く前に書かれた本なんだけど、ここで訴えている都市計画や建築に関する問題は、今でも充分に通用する。ていうか、大震災を経た今こそ読みなおすべき書物ではないかと思った。


これを読むと今和次郎が何故関東大震災後にバラック装飾社を始めたのかが分かるし、その意義の本質的な部分が見えてくると思う。今氏の思考を「雌の視角」と捉え、それをアナーキズムの感覚と結びつけるところがなるほどねと思った。


この本には他にも気になる人物がいっぱい登場しているので、更に色んな本を読み進めたくなったのでした。