『ラファエル前派の軌跡』展
三菱一号館美術館では現在『ラファエル前派の軌跡』展が開催されています。
同館では過去、『ザ・ビューティフル-英国の唯美主義展』、『バーン=ジョーンズ展』といったラファエル前派関連の展覧会が開催されていましたが、果たして今回は、どういった切り口でラファエル前派を取り上げているのか?そこが自分にとっては一番気になるところでした。
先日行われたブロガー内覧会に招待されたので、行ってきました。
※画像は特別な許可を得て撮影したものです。
実はジョン・ラスキン展だった!?
展示室に入ったらいきなりターナーの絵が展示されていて、ちょっと面食らった。
ターナー(1775-1851)は、ラファエル前派同盟が結成された1848年以前に活躍していた、英国を代表する風景画家。
ターナーが挿絵を描いている、この1830年に出版された詩集を、誕生日プレゼントとして贈られ、感銘を受けたのが13歳当時のジョン・ラスキン(1819-1900)。
なんと、今年はラスキン生誕200年!
ジョン・ラスキンは、ラファエル前派を語る上では欠かせない人物。
美術評論家、著述家、思想家等の肩書で語られる事が多いが、今回の展覧会では彼が描いた水彩画や鉛筆画、果ては自ら彫った版木までもが展示されていて、その量の多さにちょっと驚いた。
実は、絵の腕前もなかなかのものだったりする。本人は、自分には絵の才能がないと自覚して、絵の道に進むのは断念したようだが、それは当時、ミレイやらロセッティといった、画家の中でもハイスペックな人達とばかり交流していたからではないかと。
「自然に忠実たれ」と主張していたラスキンは、その言葉通り自然を詳細に観察し、描写している。
この著書でラスキンは、風景画家は自然地理学的に地形を理解し、科学的情報に基づいた記録となるように風景を描くべきだと説いた。
ラスキンはヴェネツィアに建つ古建築物の調査を、微に入り細に入り行ない、その装飾における職工達の手仕事の痕跡に、深く心を寄せていたようだ。
経年による変化、劣化そのものに価値を見出していた。修復は破壊だとまで言う。
この考えは後に、ウィリアム・モリスを中心としたアーツ・アンド・クラフツ運動に受け継がれていく。
この、ラスキンが20~30代にかけて提唱していた美の感覚にはとても共感出来るのに、何故彼はホイッスラーのノクターン・シリーズをあれほど酷評したんだろう?
と、ラスキンの作品を見ながらずーっと思っていた。
『ラファエル前派の軌跡』展のレポートのつもりなのに、ここまで全然ラファエル前派に属する画家が登場しません。
つまりそのぐらいラスキンの仕事ぶりの方に興味が湧く展示構成になっているのです。
とりあえず今回はジョン・ラスキンのみを取り上げました。後日またこの展覧会について書いてみたいと思います。
開催概要
会期:2019年3月14日(木)~6月9日(日)
開館時間:10:00〜18:00※入館は閉館の30分前まで(祝日を除く金曜、第2水曜、6月3日~7日は21:00まで)
4月27日(土)~5月6日(月・祝)は、10:00〜18:00まで開館。※最終入館は17:30まで※5月3日(金・祝)の開館時間は18:00までです。ご注意ください。
休館日:月曜日(但し、4月29日、5月6日、6月3日と、トークフリーデーの3月25日、5月27日は開館)
主催:三菱一号館美術館
共催:産経新聞社
企画協力:インディペンデント、アルティス
後援:ブリティッシュ・カウンシル
協賛:大日本印刷
問合せ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
展覧会ウェブサイト: