この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

幸之助と伝統工芸 展

@パナソニック汐留ミュージアム


「経営の神様」と言われた松下幸之助(1894-1989)の、文化人としての側面に光を当てた展覧会。
松下幸之助は、絵画から工芸品にいたるまで、あらゆる美術品を収集したり、日本工芸会などの役員を務めたりして、日本の伝統工芸存続発展のために尽力したのだそうです。
自分はそのような業績を、今回の展覧会を観るまで、ほとんど知りませんでした。


自分は焼き物の種類がいまだによくわかってないし、伝統工芸品については最近になってようやくぼちぼち観始めるようになったという程度の人間です。
そんなペーペーですが、中期の展示がはじまった所で、特別内覧会に参加出来ることになったので、観に行って来ました。



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※画像は主催者からの許可を得て撮影したものです。

重要無形文化財保持者(人間国宝)の作品が並ぶ展示室

松下幸之助は40歳を過ぎてからお茶をたしなむようになりますが、使用していた茶道具は、その当時の現代作家によるものが多かったようです。もちろん江戸時代の茶碗も展示されていますが、数は少ないです。
この人はモノ自体にではなく、それを作る人の方にに興味を抱いていたようです。
そのため、ここには幸之助が蒐集したものだけではなく、交流のあった作家達の、代表作ともいえる作品が出品されています。


わたしが前期展示を観た時に結構気になったのが、森口邦彦の「千花」という作品だった。
花のモティーフが卍パターンの様に単純化されて、着物全体を覆っている。
で、卍と卍の間に見えるパターンが、まるで原発(原子力)マークみたく見えるのに驚いてしまった。
卍っぽいパターンだって、ハーケンクロイツの方を先に思い出しちゃったぐらいだしw
たぶん、クラフトワークのライヴを見に行く直前に足を運んだので、こんなイメージになったのだろうが。


そんな連想はさて置き、自分は単純にこの着物を着てみたくなったのだ。レプリカでもいいから。
普段着物を着る機会は皆無の人間なので、どんなに素敵な柄の着物を見ても、そこまでの欲求は沸き起こらないのだ。なので、自分としては珍しい。
残念ながら現在は作品が入れ替わっちゃったので見られないのですが、ミュージアムショップにこの作品の変形ポストカードが売ってます。


中期展示の「流砂文」は一見モノトーンな流線形(?)ストライプ柄で、これはヘタなドレスを着るよりも、ずっとお洒落に着こなせそう。これもかなり着てみたくなった。


森口邦彦の父は森口華弘。この方も人間国宝。親子隣り合って作品が展示されていた。
父の方は伝統的な文様を使いながらも、柄の飛ばし方が斬新で、こちらも良かった。

異種配合?

他の作品も、由来だの人間国宝だのといったデータを抜きにして観たら、案外ポップでキッチュで可愛らしいものが多くてビックリしました。
歴史的名品で言うと、追加公開された「萬歴赤絵」の花瓶の、浮彫になっている獅子の顔が、結構すごかったです。
いわゆる目利きではない、部外者の視線でものを選ぶと、こういうのが集まってくるのかも。
何せこの方、お茶を始めて1年も経たないうちに、老分を任命されちゃったという、型破りな経歴も持ってますからね。


幸之助自身は、「名工の作」という言葉を用いて、自社の製品もそうであらねばならぬと言っていた。
その考え方は、一品一品を時間短縮で大量生産する製品に、どこまで反映されていたんだろうか?
あんまり松下電工の製品で、これぞ!というのが即座に思い付かない。
会場入口で上映されていたヴィデオに幾つかの製品が映し出されていたが、それを見ても「うーん…」というモヤモヤ感が残るだけ。
もっと時間が経たないと、戦後の電化製品の、本当の価値は分からないのかも。


この展覧会はこういう事を改めて考える、いい機会になったと思います。観覧機会を与えて下さった方々に感謝いたします。


会期は中期が7/9(火)まで。後期は7/11(木)-8/25(日)です。