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この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

夏目漱石の美術世界展

@東京藝術大学美術館


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先日この展覧会の『ブロガー特別内覧会』に応募してみたところ、運良く招待されたので、行って参りました。


※掲載画像は美術館より特別な許可を得て撮影したものです。


夏目漱石の小説をロクに読んだことがなくても、世紀末美術、ラファエル前派、英国美術、アール・ヌーヴォーetc…、そんなキーワードにときめく人ならば、この展覧会は相当楽しめると思います。実際自分はそうでした。
ウォーターハウス、ジョン・エヴァレット・ミレイ、ロセッティ、ビアズリー、ターナー等の絵が観れるってだけで盛り上がりましたから。
10月8日から東京都美術館で開催される『ターナー展』や、来年1月から森アーツセンターギャラリーで開催される『ラファエル前派展』、三菱一号館美術館で開催される『ザ・ビューティフル――英国の唯美主義1860-1900展』をチェックしてる人はその予習として。あるいは、この前の『ミュシャ展』ではじめてアール・ヌーヴォーの世界に魅了された方達にもおすすめします。


と、日本の美術界はこのところまた英国推しの様相を呈しているようだが、何で?


でもこの展覧会は、漱石が幼少時から親しんできた江戸絵画も展示されている。
伊藤若冲、与謝蕪村、長沢芦雪渡辺崋山、円山応挙。酒井抱一は…、後期展示だ。
酒井抱一といえば、『虞美人草』に出てくる酒井抱一作の《虞美人草図屏風》を、荒井経という現代の画家が推定試作した作品が展示されていた。
この試みは面白いと思った。他にも、『三四郎』で、作中に出てくる原口画伯が描いた《森の女》を、同じく現代の画家である佐藤央育が推定試作したりとか。こっちは黒田清輝の画風を踏襲してるみたいだから、更にひん曲がってるw


こんな感じで日本の作品と西洋の作品とが混在して展示されているのだが、しかも描かれた年代もバラバラだったのだが、何の混乱もなく鑑賞出来たのが不思議だった。

漱石と同時代美術

このコーナーでは、漱石が『文展と芸術』の中で、具体的に言及した絵が展示されていた。
この辺に展示されている絵は、今から100年ほど前のコンテンポラリー・アートだったんだよな。
歴史に埋もれてしまったような絵が、息を吹き返したように飾られている。
自分は、意外とこういう括りで集められた展示を観る機会は少なかった様に思う。
ここの空気感は特別だった。芸大美術館という場所も関係しているのだろう。
漱石はこれらの作品にケチをつけたり褒めたり、或いは完全無視したりと、完全にやりたい放題だった。


このコーナーで最も進歩的に見えたのは萬鉄五郎のフォーヴィズム絵画だったが、それでも、ここに展示されていた作品は、萬の他の作品よりも大人しい。

モダンガール登場前夜

作品の中には数多くの女性が描かれているが、印象的な女性達は皆豊かで長い髪をしている。そして、青木繁の描く女性像はスラっとしていて背が高い。これがアール・ヌーヴォー期の女性の特徴か。漱石自身もこういう女性がお好みだったのか?

アール・ヌーヴォー風の装幀

橋口五葉等の手掛けたアール・ヌーヴォー風の装幀はオシャレだった。
しかも、ただのオシャレじゃない。
吾輩は猫である』ではちゃんと猫キャラも生み出している。
猫キャラは不滅だ。大衆性ありまくり。ずるい!
グッズ売場には、この猫キャラを用いた商品がいっぱい並べられていた。
詳細は公式サイトに載っています。
自分は普段、この手のグッズには決して手を伸ばさないんですが、このレトロ感は反則!シール買っちゃいましたよ。

夏目漱石の絵

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今回、観るのを楽しみにしていたうちの一つが、夏目漱石自身の描いた絵画だった。
内覧会オープニングの解説でも、ヘタだヘタだと散々言われていて、実際その通りなのだが。
家をまるでケーキ箱の様に描いていたしw 風が吹いたら飛ばされちゃうよ。
南画に影響を受けた風景画を見ていると、視線が蛇行し、うねうねと上の方に登っていくのが奇妙で面白い。
うん。この焦点の定まらなさが展覧会全体の魅力にも繋がっているのだ。


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夏目漱石の小説は高校の教科書に載っていた『夢十夜』の印象が強い。
…筈だったのだが、今回、十夜目の話の元となったブリトン・リヴィエアーの『ガダラの豚の奇跡』という絵を観たら、全然話が思い出せなかったので、今慌てて読み返しているところです。
いやーこの絵はなかなかのインパクトだった。この絵の存在を知ったのは、この展覧会で得た収穫のひとつかも。


本展覧会は東京展の後、静岡に巡回します。