この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

小村雪岱とその時代 粋でモダンで繊細で @埼玉県立近代美術館

小村雪岱は大正、昭和初期にかけて美人画や新聞、雑誌等の挿絵、舞台美術等、多彩な活動で世に知られた日本画家。
埼玉県川越市出身なので、作品を所蔵する埼玉県立近代美術館では、これまでにも何度か雪岱の展覧会を開催しているが、見に行ったのは今回が初めて。
この人の手による、泉鏡花の本の装釘が余りにも美しかったので、いつか実物をまとめて見たいと、漠然と願っていたのがようやっと実現。
この人のだけでなく、泉鏡花本はどれも美しいので、会場には橋口五葉、それから鏑木清方等の挿絵による装釘本も展示されていた。


以下、画集も買わず展示作品リストも貰い損なったので、うろ覚えな記憶を頼りに感想を少し。
小村雪岱の美人画は、江戸浮世絵風の細い目で、無表情。しかし何ともいえぬ情感をたたえている。
あと、自然描写が洗練されていて、スッキリとしているんだよな。これは線が単純化されればされる程際立ってくる。同じ事は着物の描写にも言えて、女性の着物の線がとても艶かしいのだ。作品の中に、あとちょっと崩れたらはだけてしまいそうな着こなしをしている女性の絵があって、あれにはぎょっとした。


挿絵の原画は失われているものもかなりあるようだ。無事に出版社から戻ってきた挿絵の中には、掛け軸に仕立て直されている作品もあった。昔から原稿の類はぞんざいに扱われていたという事を証明したようなものか。そういえば、この前見てきた萩尾望都原画展のカラー原画の中にも、枠外に「切り離し厳禁!」と書かれていたものがあって、これにはビックリした。そっか、そんな事までされていたのか。萩尾望都の作品だと、初期の傑作「あそび玉」も原稿は失われているようで、今回の原画展でもやはり展示されていなかった。


…すいません、萩尾望都展の話題にずれ込んでしまいました。すっごいファンってわけじゃないんだけど、やはり原画は見ておきたいと思ったので行って来ました。懐かしかったー。
萩尾望都原画展にもビックリしたけど、彼女のアシスタントを勤めていた事もある佐藤史生の原画展も現在開催中なんですよね。こっちの方が更にビックリ!行きたい!!しかし宮城は遠い…。