ヴァロットン ― 黒と白 展 (その1)
先日、『ヴァロットン ― 黒と白』の特別内覧会に参加してきました。
スイス出身のフェリック・ヴァロットン(1865-1925)は、19世紀末〜20世紀初頭にかけてのパリで活躍した画家です。
日本で本格的な回顧展が開催されたのは、2014年の三菱一号館美術館が最初でした。
わたしもこの回顧展で、初めてヴァロットンという画家の存在を知りました。
それ以降は同美術館で行われた『ナビ派展』『こども展』等、数々の企画展で作品が展示されてきたので、今では日本でもお馴染みの画家になったのではないでしょうか。
もはや、ヴァロットンといえば三菱一号館。三菱一号館といえばヴァロットンというぐらい、双方切っても切れない関係になっております。
今回は、三菱一号館美術館が誇る、ヴァロットンの木版画コレクション180点を、一挙公開しています。
木版画は油彩画とは違い、長期展示には適さない画材なのです。
なので、これだけたくさんの木版画作品を見られる機会は、大変貴重です。
三菱一号館は来年リニューアルのため、しばらく休館するそうなので、次に見られるチャンスは、相当先になりそうです。
今のうちに見ておきましょう。
19世紀末パリにおける都市生活を体感。
※画像は主催者側の許可を得て撮影しています。通常は一部エリアを除き、撮影禁止です。
絵の勉強のためスイスからパリに渡ってきたヴァロットンは、そこで似顔絵描きの仕事を得ます。
当時の手法はリトグラフでした。
小説家テオフィル・ゴーティエ。
この著名人シリーズは、当時のフランス社会に、どんな人達が大きな影響を与えたのかを知ることが出来て、とても興味深かったです。
館内では至る所に、このようなアニメーション映像が仕掛けられています。壁も注意してみましょう。
パリの観察者。常に傍観者として。
※こちらの展示室のみ通常も撮影可能です。
この、数字が影絵のように映し出される演出も洒落ています。
このエリアにいると、まるで19世紀末のパリの街角を歩いているように感じます。
以前同館で開催されたロートレック展でも、街角の雰囲気が再現されていましたが、あの時はポスター等の、街を彩る作品がメインだったのに対し、今回は街なかを歩く市民達が主役。
ヴァロットンは、スナップショットの如く、雑踏風景を木版で掘り出していったのです。
『群衆 ― パリの野次馬たち、街路の生理学』
こちらには当時の出版物もいくつか紹介されています。
『罪と罰』
これは、当時のフランス社会を痛烈に風刺したリトグラフ作品。
内容は壁面スライドで見ることが出来ます。
社会の中にある闇は、今も昔もちっとも変わらない事を実感させられます。
同時代の画家達は敬遠しがちだった“死”のテーマも、ヴァロットンは積極的に描きました。
都市に生きる人たちの行動形式は、細部は違えど、100年以上前既に確立されていたという事を、ヴァロットンの作品は示しています。
傍観者であり続けたからこそ、描けたのでしょう。
ヴァロットンとロートレック ― 女性たちへの眼差し
※こちらは通常撮影禁止です。
同じく傍観者の視点でパリを描いたロートレックの作品も、この展覧会では見る事が出来ます。
この2人は1歳違いだったんですね!
こちらはトゥールーズ=ロートレック美術館の協力で実現した、特別展示になっています。
ロートレックは特定の人物にフォーカスするけど、ヴァロットンはしないとか。そんな感じで比較しながら見ると、更に面白いのではないでしょうか。
一旦ここまで。
(その2)に続きます。
開催概要
- 会期 : 2022年10月29日 (土) 〜 2023年1月29日(日)
- 休館日 : 月曜日、12/31、1/1 ※但し、 [トークフリーデー 11/28、12/26) 1/2、1/9.1/23は開館
- 開館時間 : 10時~18時(金曜と会期最終週平日、第2水曜日は21時まで) ※入館は閉館の30分前まで
- 入館料 : 一般:1,900円 高校・大学生: 1,000円 小・中学生: 無料
- マジックアワーチケット (毎月第2水曜日17時以降に限り適用) 1,200円
- ※マジックアワーチケットは、 実施月の1日に 「Webket」内にて販売開始となります。
- お問い合わせ : 050-5541-8600 (ハローダイヤル)
- 公式サイト : ヴァロットン―黒と白|三菱一号館美術館(東京・丸の内)