この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

酒器の美に酔う

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静嘉堂文庫美術館では4月24日(火)から、『酒器の美に酔う』展が始まりました。

茶器と同様に、古美術や骨董の世界で重要な位置を占めるのが、酒器。

中国古代から江戸時代末期に作られた、多様な酒器の魅力に焦点を当てた展覧会です。

そして、静嘉堂文庫が誇る国宝『曜変天目』も、特別公開。

今年度は、この時期のみの公開です。見たい方はこのチャンスをお見逃しなく!

 

先日、展覧会開催に先駆けて行われた、ブロガー内覧会に参加する事が出来たので、展覧会の見どころ等を紹介します。

 

 ※画像は、関係者の特別な許可を得て撮影しました。通常は撮影禁止です。

 

 酒器が美しいからお酒が美味しく感じられるのか。はたまた、お酒が美味しいから器がより美しく感じられるのか。その辺は、お酒を普段呑まない自分には、感覚がいまいち掴めない。

根っからの酒好きの中には、日頃マイ徳利とマイ猪口を携帯している人もいるらしいから、両者には深い繋がりがあるのだろう。

 

酒器というと、猪口や徳利だけではなく、

 
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酒を盛り分ける為に貯めておく壺や、

 
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注ぎ口や把手の付いた水注。

 
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熱燗をつける銚子。

 
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杯と托のセット。

 

などなど、結構バラエティに富んでいる。

 
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古代中国の青銅器も、祭祀や儀礼時に、御供用の酒壺として用いられてきた。

手前の酒壺は殷時代(紀元前14〜13世紀)のもの。

展示品について解説して下さったのは、美術館学芸員の山田正樹氏。

解説によると、実は静嘉堂には、根津美術館泉屋博古館の様な、充実した青銅器コレクションというものが、どういう訳か無いらしい。

この青銅器は、たまたま数年前に静嘉堂文庫の倉庫から発見されたもので、一般公開されるのは今回が初めて。

 
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マイ酒器を持ち歩く人は昔からいて、携帯用酒器一式なんていうのも展示されていた。

 

酒呑む人々

この展覧会は、酒器を使う側である人間の方にも光が当てられている。


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これは川端玉章『桃李園・独楽園図屏風』の右隻『桃李園図』。

兄弟で酒を酌み交わしている図で、元ネタは明時代の仇英が描いた掛軸を、横長の構図にアレンジしたものだそうだ。前期のみの展示。


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何と楊貴妃も登場してるぞ。酔っ払う楊貴妃の姿。なのか?

 
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こちらは『酒飯論絵巻』。全四段から成る酒宴や会食の様子が絵と文字によって描かれている。現在は第二段を展示。

室町時代の絵巻なので、風俗画としてはかなり初期のものではないか。

こんな面白い絵巻があるとは知らなかった。

 

ここは酒宴による乱痴気騒ぎの様子がかなりリアルに描かれている。

リアルと言っても、土佐派の絵師による描写のせいか、ハッキリ言って絵はそんなに上手くない。でも、ヘタウマならではの説得力には、凄いものがある。

縁側から庭に向かって胃液を放出する男の姿もあり。

何でも室町時代には、“吐き芸”なる芸がもてはやされていた、とか?

この話を聞いた時、喧嘩の飛び道具として、自在に吐く術を駆使していた、南方熊楠の事を思い出したのだが、吐き芸は日本古来の芸当だったのか。

 

あと、ここには汚れやすい為に一回限りで使い捨てされた『土器盃』も描かれている。神事や酒宴向けに重宝されていたようだ。当時の器は、現存してないんだろうな。多分。

土器盃は水分の吸収力が強いので、直接口をつけると唇の皮がビリっと剥がれたらしい。

酒を飲むには、こんなに身体をはらなきゃイカンのかよ!

 殷王朝も、酒によって滅ぼされたみたいだし。酒の力は侮れない。酒との付き合いは、ほどほどに。

 

と、書いておきながら告知なのですが、静嘉堂文庫美術館ではGW中、『静嘉堂ガーデン』が開催されます。開催中は二子玉川地ビールと美味しい料理、スイーツが美術館の前庭で楽しめます。勿論、お酒が駄目な方でも、コーヒーやソフトドリンクが用意されているのでOK。

新緑が生い茂る静嘉堂ガーデンで、お酒を味わうのも贅沢なひと時ではないでしょうか。ここは緑に囲まれているので、これからの時期は、虫除けスプレー必須かもしれないけどね。

詳細は、静嘉堂文庫美術館のウェブサイトをご覧下さい。

 

お酒を普段呑まない自分が見ても十分に楽しめる、静嘉堂文庫が誇る名品揃いの展覧会です。お勧めします。

 

展覧会概要

会期:4月24日(火)~6月17日(日)※会期中展示替えあり 前期:4月24日(火)~5月20日(日) 後期:5月22日(火)~6月17日(日)

会場:静嘉堂文庫美術館

開催時間:午前10時~午後4時半