この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

長沢節とセツ・モードセミナーの世界。

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弥生美術館・竹久夢二美術館

  

この展覧会が始まった当初から行こう行こうと思っていたのになかなか行けず、会期後半になってようやく見る事が出来た。

自分は昔、長沢節が御健在だった頃のセツ・モードセミナーに通っていた。

 

展示室は1階がセツ先生(と書いちゃうな〜、やっぱり。)のスタイル画中心。2階に上がると水彩画と、あとは学校で使っていた椅子(兼踏台兼物入れ)が置かれていて、校舎の写真と共に、セツ先生が人物デッサンをする映像が流れていた。

 

そうだ。もうセツ・モードセミナーは存在しないんだ。分かってはいるんだけど、校舎にしか置かれていない筈だった椅子がここにある事で、その事を如実に思い知らされた。

以前同館で開催された長沢節展も見ていたが、あの頃はまだ学校としてのセツは健在だったから、長沢節の世界はあそこで息づいている感じはしていた。

でも今回の展覧会は、セツ自体が歴史上の事物として語られている様にしか見えない。ニュアンスが全然違う!

 まさかセツ先生のデッサンよりも、椅子を見た事で郷愁の念を覚えたとは!

 

その椅子に座ってセツ先生がデッサンする映像をずっと見ていた。

授業では顔デッサン、人物デッサン、群像デッサン、裸体デッサンがローテーションで行われていたが、どれも1ポーズ10分と決められていた。

この映像でもセツ先生は丁度10分でデッサンを描き終えていた。

10分間の緊張と集中。あのリズム感が懐かしい。

 

わたしが展覧会を見に行った日は、セツ出身の石川三千花さんと上田三根子さんのトークショウが開催されていた。

御二方はセツ先生と身近に接する事があったので、色んな抱腹絶倒エピソードを披露してくれた。

久々にセツ先生のユニークな存在感を思い出させてくれたひと時だった。

つくづく、ああいう人って今はいないなぁ〜。

 

上田三根子さんといえば、昔セツで知りあった友達と一緒に、世田谷美術館の区民ギャラリーでグループ展を1度だけ開催した事があるんだけど、最終日にたまたま、この日のトークショウにもお名前が出て来た中野翠さんと一緒に、見に来てくれたんだよな。偶然、何かのついでに立ち寄っただけなのだろうけど、セツの名前に反応してなのか、割と1点1点ちゃんと見てくれていた様な気がする。こんなエピソードなんてずっと忘れていたのだけど、久々に上田三根子さんの御姿を拝見して、あの時の記憶がぐっと蘇って来た。

 

セツに通っていた頃は、自分なりにアクションを起こしていた時期でもあったのかな。それが成功したのか失敗したのかはさておき、あの場所には何でもやりたい事をやってみようという、自由な空気が流れていた。あの空気は自分もこれから、何らかの形で受け継いで行きたいなと、改めて思った。