ヴァロットン展
ヴァロットン展 ―冷たい炎の画家 三菱一号館美術館(東京・丸の内)
『ザ・ビューティフル展』の内覧会に参加した時のこと。三菱一号館美術館の館長である高橋明也さんがご挨拶をした時に、ビューティフル展を紹介するよりも先に、今年度開催予定になっていたこのヴァロットン展を強くいちおししていた。
その口調がかなり本気だったので、それ以来この展覧会の事が気になっていた。
今回も、内覧会への参加が叶ったので行ってきました。
※画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
さて、スイス、ローザンヌ生まれのフェリックス・ヴァロットン(1865-1925)。彼は19世紀末~20世紀初頭のパリで活躍した画家だというのに、自分の中では今までその名前が全く引っかかって来なかった。
フランスでも近年になってから再評価されているようなのだ。
内覧会のレクチャーでは、日本での若冲、蕭白人気と相通ずるものがあると言っていた。
ヴァロットンの、これだけまとまった作品を観るのは今回が初めてだったせいか、鑑賞中は既知の画家との比較作業から逃れられなくなって、困った。
例えばこの『立ち上がるアンドロメダとペルセウス』なんて、横尾忠則か、はたまた蛭子能収か。
『これが戦争だ!』というタイトルの木版画シリーズを観ていると、水木しげるの存在を意識せざるを得なくなって来る。
という感じで、ヴァロットンの絵はちょっとマンガちっくなところもあるのかもなぁ。
サスペンス的要素もあるので、バンド・デシネっぽいのか。
この辺については詳しく知らないので、勘違いで書いてます。たぶん。
あと、脳裏に浮かんだ他の画家というと、カイユボットにエドワード・ホッパーにカシニョールにラブルールに…。
版画作品だとビアズリーとか。と、自分の知識の範囲なんてこんなものだ。というのをヴァロットンによって見透かされたような感じで、むむーーっ!?とくる。
強そうな女性達
ヴァロットンの妻は年上だったようで。
そのせいか、熟女っぽい女性を描いた作品がおおい。
臀部しか描かれてなくても、これが若くはない女性のものだというのはわかる。
他にも、両腕を上げて脇毛を見せるという大胆なポーズで描かれている女性像とか、チェスに興じる全裸の女性達とか、結構挑発的な作品が並んでいた。
これらの作品を見ているうちにふと、
「この人は心の底から女性を愛した事があったのかなぁ?」
と思った。
いや、もしかすると異性愛者じゃなかったのかも…。
なんて事まで考えていた。
作品を見れば見るほど、謎が増していく画家なのです。
9月23日(火・祝)まで。気になるなら見ておいた方がいい展覧会です。
別室では『バルテュス最後の写真 ― 密室の対話』展が開催されている。
こちらは9月7日(日)まで。
同じ女性でも、こちらは少女。ひとの好みは千差万別だけど、ヴァロットンとバルテュスとは女性の好みがえらく違う。