この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

プーシキン美術館展 フランス絵画300年

会期 : 7/6(土)~9/16(月・祝) @横浜美術館


開催日当日に行なわれた、夜間特別展覧会に行って来ました。


ルノワール作品を宣伝ポスター等にした展覧会は年中日本のどこかで開催されているし、今まではどちらかというとそそられない展覧会だったのですが、この前見に行った『奇跡のクラークコレクション展』でちょっと認識が変わりました。ルノワールの絵は、それを買い求めたコレクター自身の好みや人間性を忠実に映し出す鏡のような役割を果たしているのだなというのが、初めて実感出来たからです。


今回の展覧会も、真の主役はロシア人コレクター達です。
ロマノフ王朝エカテリーナ2世にアレクサンドル2世。
ロシアの大貴族であるニコライ・ユスーポフ。
ブルジョワジーの台頭により登場した、イワン・モロゾフとセルゲイ・シチューキンといった大資産家達。


特に目を惹いたのは、モロゾフとシチューキンが集めた、フランス印象派以降の作品群でした。
彼らの膨大なコレクションは、ロシア革命によって全て国家に没収されてしまうのだが、その後国外に散在することはなく、現在はこのプーシキン美術館とエルミタージュ美術館に分割所蔵されているようです。
この経緯はじつは今回の展覧会で初めて知ったのですが、ここで新たなる疑問が。
この2館に彼らのコレクションはどのような基準で振り分けられたのだろうか?
やっぱり現地に行かないとこれは分からないかな…。



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観覧前にこのようなスライドレクチャーが行なわれ、美術館の主任学芸員が展覧会の見所等を詳しく解説してくれました。
※画像は夜間特別展覧会につき、特別に撮影許可がおりました。


と書きつつも、王朝時代のコレクションにもなかなか気になる作品がありました。

第1章 17-18世紀 ― 古典主義、ロココ


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ユベール・ロベール『ピラミッドと神殿』


おおっ、ここでユベール・ロベールの作品にお目にかかれるとは!
去年国立西洋美術館で開催されたのを観に行ったよなぁ。感想文書かなかったけど…


他にも、夏目漱石の美術世界展でかなりのお色気ぶりを放っていたジャン=バティスト・グルーズの作品が、ここにも出品されていたのでちょっとビックリ。みなさんお好きなんですなー。

第2章 19世紀前半 ― 新古典主義ロマン主義自然主義


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ブノワ=シャルル・ミトワール『カンペンハウゼン男爵夫人プラスコヴィアの肖像』


レース使いが気になった。この時代ならではのコスチューム。
写真が全ていい加減ですいません…。ここまでは無気力モード全開だったのがバレてしまったな…。


ここからが印象派以降。

第3章 19世紀後半 ― 印象主義、ポスト印象主義


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ケル=グザヴィエ・ルーセル『ケレスの勝利(田園の祭り、夏)』(左)
シャルル・ゲラン『テラスの二人の少女』(右)


こういう絵を見ると、ロシア人も北欧人と同様に、綺麗でハッキリした色を好むのだなと、改めて思った。
ルノワールゴーギャンゴッホも、みんな作品の色彩が素晴らしかった!


そうそう、冒頭に名前を出したクラークさんもモロゾフさんも、どちらも繊維関係の会社で財を成した一族のようですが、って、クラークさんはミシンの方だったと思うのですが、買い求めたルノアール作品のタイプには相違があるような…。クラークさんは少女画が好みだったのに対し、モロゾフさんは絵のモデルになったジャンヌ・サマリーが大のお気に入りだったようで。こちらは年は若いけど、成熟した女性っぽい。
ジャンヌ・サマリーをモデルにした絵画も複数所有していたようなのだが、これもエルミタージュとプーシキンに分散されているようだ。

第4章 20世紀 ― フォーヴィスムキュビスム、エコール・ド・パリ


ここではアンリ・ルソーの『詩人に霊感を与えるミューズ』が観れたので嬉しかった。
この題名の作品は2枚存在しているのだ。
プーシキン美術館にあるのは、詩人とミューズの足元にニオイアラセイトウが描かれているヴァージョンだった。
もう1枚はカーネーションが描かれている。こちらはバーゼル美術館蔵。
今回展示されていた作品の方が緻密に描かれているのかな。


このコーナーにはマティスピカソといった錚々たる画家たちの作品が展示されているのだが、ここではあえてモイーズ・キスリング『少女の顔』について触れておこう。
この絵の額縁にはヒビが入っていた。何でだ??わざと?



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ミュージアムショップはフランス絵画を観たはずなのにロシア一色ですw
プーシキン美術館展のロゴは、ロシア構成主義だけじゃなくて、マトリョーシカをも意識したものだったのですね!
こんな写真も収めていたのに、会場では全然気づいていませんでした。
ていうか、ロシア構成主義のロゴ自体が、マトリョーシカからひらめいたものだったのか??
いろんな意味で、目からウロコの展覧会でした。
まだまだ知らないことが多すぎる。