この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

瞽女と哀愁の旅路 斎藤真一展 @吉祥寺美術館

斎藤真一の絵もまた、村山槐多の絵のように、赤の印象が強い。村山槐多はガランス(茜色)。斎藤真一は朱色。
以前、この人の展覧会を、現在休館中の東京ステーションギャラリーで見た事がある。ここの、剥き出しにされた古い赤煉瓦と、作品の赤みとが上手く響き合っていて、凄く印象深かった。


斎藤真一は、盲目の旅芸人、瞽女や、自身の養祖母から聞いた吉原の遊女の話を元に、数多くのおんな達を描いた。作品の一枚一枚から、モデルになった彼女達の人生が垣間見れるのだが、リアリズムの追及が彼の絵を幻想の世界へと導いている。瞽女も遊女も、スピリチュアルな世界と交信出来そうな職業のように、段々と見えて来るのだ。


斎藤真一の絵には、一直線に流れていく「風」が描きこまれているように思える。それが風車と絡み、キシキシと乾いた音をかき鳴らす。音は、ハーモニーのない単音。この風は少し厳しいものだけど、身をまかせてみたら案外気持ちいいのかもしれない。


会場には斎藤氏が挿絵等を手がけた書籍も展示されていた。その中に小川洋子の「シュガータイム」があった。これは絶頂期のマリ・クレールで連載していた小説ではないか。そういえば確かにこの人の挿絵だった。雑誌を処分する時にこの部分は残さなかったから、当時はピンと来てなかったんだな、きっと。ここでこの本にお目にかかるまで、すっかり忘れていた。わたしが斎藤氏の絵の凄さを知ったのは、この小説を読んだ後の事なのです。