この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

昔のファッション雑誌

昔の雑誌はどんなジャンルのものでも面白い。
今回はファッション雑誌を取り上げてみる。

セゾン・ド・ノンノ

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最近古本屋で発見したので買ってみた。中は事前に見れなかったので、半ば博打打ちの気分で。

  • 1974年10月号(画像左端)

これが創刊号で、一冊丸ごとフランス(殆どパリ)特集。
誌面の色彩は、当時の印刷技術のせいか、インクをたっぷりと吸い込んでいるようで、非常にシック。これからどんどん暑い季節になるっていうのに、こんな秋たけなわの古ーいファッションを見て「わー、いいなぁ〜。」と思いながら眺めている自分もどうかと思うんだけど。でももうこの夏のコーディネートなんてすっ飛ばしちゃってもいいやと思っていたりする。

創刊号という気負いもあったのか、執筆陣も豪華。巻頭は朝吹登水子。食のページでは森茉莉カトリーヌ・ドヌーヴについては澁澤龍彦、などなど。

この時代でも既に「古き良きパリ」ではないという認識があった。しかし35年も前だから、この時代のパリの街並みですら十分セピア調に色付いている。

当時は今程情報が容易に入手出来なかっただろうから、これはもの凄く充実したガイドブックになり得ていたのではないか?買い物好きにはかなり参考になったと思う。

  • 1976年2月号(画像中央)

こちらはパリに的を絞った特集。創刊号と同様の高いクオリティ。パリの街角を撮った写真が美しい。表紙のファッションはソニア・リキエル。ピンクが可愛い!

  • 1977年2月号(画像右端)

私がセゾン・ド・ノンノという雑誌の存在を知ったのはこの辺りから。母親が買ってきたこの号を、飽きずに何度も何度も眺めていたものです。いつの間にか処分されてしまったのを、とうとう取り戻したぞー!
内容は、手作りものなら何でも取り上げている。編物、織物、キルト、洋裁、お菓子の作り方、コーヒー・紅茶のいれ方等々、これでもかと盛り沢山。この号辺りから知ったし、母親も手作りを取り上げた号ばかりを買ってきていたので、この雑誌は長年手作り専門誌かと思っていました。

当時こういう「生活全般を豊かにする」コンセプトの雑誌だと、他にも「生活の絵本」という、今見るとエコライフの追求を先取りしていたような雑誌もありました。中原淳一氏も執筆していたので、「それいゆ」の根本的な思想を継承していたのは「生活の絵本」だったのでしょう。セゾン・ド・ノンノは、ノンノ別冊だけあって、消費もしながら人生を謳歌しましょうという雰囲気が感じられます。

ケンゾー

パリ特集号のどちらにもケンゾーが取り上げられている。当時ファッション界のスーパースターでしたからね。創刊号の表紙のファッションもケンゾー。

私が大人の服を着始めた頃、既に巷では、小物等のあちこちにKENZOのロゴがはびこっていたので、正直ダサいイメージが自分の中では出来上がっていた。
が、この頃のケンゾーの服にはまだオルタナティブなパワーが感じられた。
ムチャクチャ個性的な形をしているわけではなく、どちらかと言うとシンプル。それだけに着る人の個性が前面に表れてしまうような手強さがある。若い頃はこの魅力がちゃんと理解出来なかった。色使いが独特っていうのは昔から思っていたが。今になってこの手強さに挑戦してみたくなっているというのも、これまたどうかと思うんだけど。しかしケンゾーは今や第一線から退き、ブランドは他のデザイナーに任せている。
いや、今のデザインじゃなくて、この当時の服を今古着として着たい。

当時の記事によると、サンローランは右翼で、ケンゾーは左翼と評されていた。ケンゾーはいわば、浮世絵が海外で発見された時のようなショックを、当時のヨーロッパ人に与えたようなのだが、当時のケンゾーさんの風貌は、今見ると何だかベトナム難民のよう(シツレイ!)。そうそう、この頃はまだベトナム戦争が終結していなかった。だから、東洋の神秘というよりも、もっとエスニックで血が濃いイメージなのだ。

多分、1930年代以降のヨーロッパ人にエスニックファッションを強烈に印象付けたのは、イギリスの植民地下にあったインドの顔として、ヨーロッパに現れたマハトマ・ガンジーではないかと思う。

別にガンジー程の影響力はケンゾーさんにはないと思うけど、得体の知れないエスニックパワーをヨーロッパに植え付けたであろう事は確か。