この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

とんかつ屋と花のノートルダム

※どうでもいい書き込みなので、表面上は折り畳んでおきます。

ある日の昼下がり、1人で昼食を取ろうとしていた自分は、以前から気になっていた、いつも行列の出来ているとんかつ屋さんに並んでみる事にした。
そこはカウンター席のみで、混雑する時間帯は、列に並んだ順番通り空いた席に着くルールになっていた。なので、連んで来ても隣通しの席を確保する事はほぼ不可能。数人連れで様子を伺う客も来ていたが、この列を見てあっさり引き下がる。そういう客は大抵女性。単独で来ていた女性客は自分の他皆無。女性は自分とカウンター内でテキパキと切り盛りしているおかみさんの2人のみ。完全アウェーである。
カウンター席の真後ろには順番待ちの人用に長椅子が設えてあり、待っている人は順繰りに店内奥の方へ押し込まれていく形になっているのだが、通路が狭く、奥にいた人が席に着くためそこを通るには、長椅子に座っている人達は体を縮こませなければならない。まるで満員電車の中にいるみたいだ。

「息苦しい!」

席を確保するまでにはまだ時間がかかりそうなので、カバンにしのばせていた本を読む事にした。この日入れていたのは「花のノートルダム」。ヤバい、本の中もオトコオトコ(正しくはオカマオカマ)した世界だ。周りを、全員同じ見た目の肉料理*1を無言で食する男達、これから食するために無言で待機している男達で囲まれ、外からも中からも立ち込める濃厚な臭気。

「むせ返りそうだ!」

多分こんな状況も、ジャン・ジュネの手にかかれば、美的要素を見い出し、詩的なテキストで綴られるのではないかと。(それはないない)
或いは石田徹也なら、オートメーション化された非人間的な食事風景を、ニヒリスティックな視線で描写するであろうか。
私はといえば、何だか自分が透明人間にでもなったような気分を味わった。実際やっとこさ1番端の席を確保し、カウンター越しに注文したら、店の主人は「え、いたの!?」とでも言いたげな表情で私の方を見たし。ええ。いたんですが。

肝心の味ですが、急いでかき込んでしまったのでよく覚えていない。でも口にしてすぐに、「ひれかつにすれば良かったかも…。」と反応したのは確か。次回はひれかつに挑戦してみます。でも凄い量なんだろうなぁ…。
ここが人気なのは手頃な値段でお腹いっぱいになるボリューム感。これに尽きると思う。

花のノートルダム (河出文庫)

何と、堀口大學の初訳から数十年の時を経て、昨年新訳で復活。訳者は鈴木創士(EP-4初期メンバー)。カバーデザインはミルキィ・イソベ。ジュネを21世紀に蘇らせる為に、80's色を感じさせる人を引っ張り込んできたという感じ。実は、ジュネはずっと敬遠していたので今回が初挑戦。こんな取っ掛かりで今頃読む気になったというのも何だかなー…。

*1:メニューはとんかつ定食とひれかつ定食の2種類のみ。ここで詳しい人ならお店の名前が分かる筈。