この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

Roy Montgomery / Inroads

ニュージーランド出身のギタリスト、ロイ・モンゴメリーの、drunken fish以外からリリースされたシングルやコンピレーション、未発表テイクものを集めた2CD。4トラックレコーダーというローテク機材で眩惑的なギターサウンドを織り成す。rebisから2007年にリリース。
splitシングルものではloren mazzacane connors、azusa plane等、面白い組み合わせで出してたんだなと思ったりして。私がロイ・モンゴメリーを聴き始めたのはここ数年の事なので、大体今から10年ほど前に発表されたこれらの音源は、ほぼ初聴き。
1枚目は"paved"(舗装されたもの)、2枚目は"unpaved"(舗装されていないもの)と名づけられている通り、2枚目の音はより荒削りで、素材感がむき出しになっている。アルバムジャケットの写真*1に写し出されている、ザラザラとした荒野のような音。聴いていると、パチパチと砂埃が肌に叩きつけられた時の、あんな痛さが蘇ってくる。まあ、そんなに強烈な自然の驚異を自分は体験していないから、この程度の想像力しか自分の中では動員出来ないのですが、肌で感じる痛さと同時に、感情の揺れまで引き起こされるのには驚いた。これはあんまり自分の中にはないなって思わせる心のうちなんだけど。
ロイさんは、80年代初頭のポストパンク期から活動していて、80年代半ばになると一旦音楽業界から身を引き、大学に戻り、学位を修得していたようです*2。更に演劇の世界に身を投じて、そこで舞台や映画のための音楽を手がけていたようです。音に映像的、感情的な要素を込められるのは、こういう経験によるものなのかも。
このアルバムに入っている音源は2000年までのもの。21世紀に入ってからのものはなし。いつかはシーンに復活してくるのだろうか?

*1:ロイ・モンゴメリー自身が撮影。

*2:現在は大学で教えているみたい。