林忠正 ジャポニスムを支えたパリの美術商
すいませんうっかり更新が止まってしまいました。気付けばもう桜の季節…。
深井克美展は結局見に行けませんでした。代わりに3月は、都内の展覧会にピンポイントで回っております。
林忠正―ジャポニスムを支えたパリの美術商|開催中の展覧会予定|国立西洋美術館
金曜日は仕事帰りに国立西洋美術館で開催中の『林忠正』展に行って来ました。
ここのメイン企画は『ル・コルビュジェ』展なのですが、大胆にスルー。
開幕から1ヶ月近くも経ってから、裏でこんな展覧会をやっている事を知りました。その間に西洋美術館の前を最低2往復はしたのに!
そう、東京都美術館で開催中の『奇想の系譜』展も先日見に行ったのでした。これは面白かったのに、感想文が書けない!
国立西洋美術館は、金曜土曜日の夜間開館時は、午後5時を過ぎると常設展は無料で観覧出来るそうです。そんな特典があったとは!
というわけで、今回は有り難くこのサービスを享受いたしました。ラッキー!
林忠正(1853-1906)は、印象派全盛時代のパリで、最初に日本美術を扱う商売を始めた日本人。所謂ジャポニスムを世界に広めた張本人とされています。
商売が成功するにつれて、貴重な浮世絵を多数海外に流してしまったと、日本人の間では一時期彼をけちょんけちょんにこき下ろしていた事もあったそうです。
しかし、彼の真の目的は金儲けではなく、美術が持つ文化的価値を広く日本にも普及させる事だったのです。その為には日本に当時無かった西洋美術館を建設し、そこに展示するに相応しい美術作品を、彼は実際に蒐集していたのです。
わたしが林忠正に興味を抱いたのは、去年見に行ったゴッホ展で、ゴッホが起立工商会社の看板の裏に絵を描いていたというのを知った時か。
林忠正は、この起立工商会社に通訳として起用され、渡仏するきっかけを得たのです。
最初は日本美術に関しては門外漢だったのに、猛勉強して現地の美術コレクターや評論家、芸術家達に熱狂的に頼られる存在になっていったというのが常人離れしていて、なんなんだこの人!?と思ったのでした。
林忠正は、当時の若き画家や陶工家達を育成して、日本美術を発展させるという構想も練っていたようで、例えば1893年のシカゴ・コロンブス記念万国博覧会の時には、鈴木長吉に『ブロンズ製十二の鷹』の制作を依頼し、出品させている。しかし、これは余りに高額な作品に仕上がった為、当時は買い手が付かなかったらしいです。
十二の鷹は、去年国立近代美術館工芸館で開催された『名工の明治』展に出品されていました。
これは撮影OKでした。って今頃upしたって意味なーい!
いやー迫力のある素晴らしい作品でしたわ。
※この作品は林忠正展には出品されておりません!ご注意の程を。
この作品も、シカゴ万博以降は時代の変化によって、忘れられた存在になっていたようです。近年再評価著しい。
展示室には林忠正と鈴木長吉が牛鍋を囲む写真が展示されていて、ちょっと笑えた。
出品されているのは書簡等、資料的なものが多いのですが、その中で少ないながらも絵画が出品されていて、自分にとっては初見の黒田清輝の『赤髪の少女』という油彩画を見る事が出来ました。
これはもともと林忠正が所蔵していた作品らしいです。
自分はそれ程黒田清輝の絵に思い入れは無いのですが、この作品はちょっと惹かれるものがありました。
こういう絵を選ぶ人なら信頼出来そうと、素直に思えたというか。偉そうな言い方になってしまいましたが。
現在この絵は東京国立博物館が所蔵しています。ここじゃないのね。って事は、松方コレクションじゃないという事か。
いや、西洋美術館のコレクションも素晴らしいとは思ってますよ。でも、もし彼がもっと長生きして、西洋美術館が林忠正コレクションで構成されていたらどうなっていただろう?って、つい想像したくなっちゃいましたよ。
19世紀芸術に関心のある方には、是非見ておいて欲しい展覧会だと思います。地味だけどおすすめです。