ルドン ― 秘密の花園
8日から三菱一号館美術館で、『ルドン ― 秘密の花園』展が始まりました。
オディロン・ルドン(1840-1916)は、世代的には印象派の画家達と重なる人だ。
ルドンの作品は最近でも、『怖い絵』展や、見に行けなかったけど『北斎とジャポニスム』展、それから『清原啓子』展でも一点出品されていたから、展覧会で目にする機会が多い。
しかし、ルドンとはどんな画家なのか説明しようとすると、結構難しい。
母に、ルドンって何人なの?と聞かれても、自信を持ってフランス人だと答えられなかったぐらい、ルドンの事をよく分かっていなかった。
なので、今回改めてまとまった数の作品が見られる事を、とても楽しみにしていた。
三菱一号館でルドン展が開催されるのは、2012年に続いて2度目。
開催初日に行われたブロガー内覧会に招待されたので、その時の様子をレポートします。
※画像は関係者の許可を得て撮影しました。
今回の展覧会の見どころの一つは、美術愛好家であったドムシー男爵の城館の、食堂を飾ったルドンの装飾画16点が、一挙に見られる事だ。
「グラン・ブーケ」のレプリカの前で挨拶する高橋明也館長。
本物のグラン・ブーケは、この先の奥まった展示室の定位置に鎮座している。
この企画は、館長が10年前から温めてきたものだった。
このグラン・ブーケが飾られていたドムシー城を実際に訪れ、その荘厳で神秘的な空間に魅了されたという。そして、この雰囲気を絶対に美術館で再現するぞ!と決意したと、熱っぽく語っていた。
部屋の薄明りも忠実に再現しているので、この展示室はいつにも増して、暗い。
実際の配置は、先に進んだ部屋でパネル展示されています。
それでも、掛けられていた絵の位置は、ここでも忠実に再現されていた。
ちなみに、配列を図解したのがこれ。床に貼られているから、踏んづけられる運命にある。
作品の前に立って解説する安井学芸員。
この時ナビゲーターのTakさんに、
「部屋の装飾画なのに、画面によく分からないものが描かれているんですが、これは…毛虫?」
などと、あられもないツッコミを入れられていたが、確かに、20世紀になったばかりの頃に描かれたものとは思えない程、抽象的な装飾画になっている。
この装飾画が好評を博したので、ルドンの元には多くの装飾依頼が舞い込んだという。
という事は、このようなボヤンとした室内装飾が受け入れられる素地は、既に当時の世の中にあったわけだ。
その先鞭をつけたドムシー男爵は、かなり感性の鋭い、先進的な人物だったのではないか。
それを象徴するのが、画像右側に展示されている『ドムシー男爵夫人の肖像』。
当時の肖像画といえば、人物が正面や斜めや横を向いていようとも、大体画面中央に描いていた。
なのにこれは、画面の右隅に寄せて描いている。
背景のぼかし方もなんか変だ。でも依頼主はこれでオッケーを出したのだ。
ルドンの生きた時代は、新たな価値観が模索された、その只中にあった。
ルドンはフランスの港町ボルドーで生まれたが、ちょっとでもタイミングがずれたら、船上で生まれていたかもしれないと、安井さんは語っていた。
やっぱり、コスモポリタン的要素もあった人なのだな。
ルドンが出会う人達は、いずれも個性に満ち溢れていた。自殺してしまった植物学者のアルマン・クラヴォー。彼はルドンに、目に見えない、微細な世界をもたらした。
そして、ルドンに影響を与えた兄エルネストは、音楽の神童だった。
エルネスト・ルドン『ピアノのためのパスピエ(Op.29)』
そして、ルドンにエッチング等の版画技法を教えたロドルフ・ブレスダン。
ブレスダンの作品は、清原啓子展でも見る事が出来たが、異様なまでに描き込まれた画面を細かく見ていると、却って細部がぼやけてくるという不思議さ。
ブレスダンは視力が悪かったため、彫りにブレが生じていたのかもしれない。
この展覧会でもボルドー美術館から作品が一点出品されています。
いつか三菱一号館でブレスダン展を見たいです。(と、リクエスト。)
ルドンといえば「黒」のイメージが強いのだが、今回のルドン展は、花や植物、風景画に焦点を当てたものになっている。
更に、蒐集家から依頼を受けて、多くの装飾作品を手がけていた事も、強調されている。
決して“孤高の画家”ではなかったのだ。
グラン・ブーケが放つ神々しさを、ぜひ会場でご堪能下さい。
Store1894
いつも魅力的なグッズが並ぶショップ。
壁に飾られているのはハンカチなんだけど、勿体なくて手が拭けないわ。
左はドムシー城壁画の一筆箋。この展覧会ならではの一品。
モノクロ缶バッジ。
ちょっとこの数にビビッたw
このトートバッグはカッコいい!