『典雅と奇想』 明末清初の中国名画展
3日から始まった『典雅と奇想』明末清初の中国名画展の、一般公開に先駆けて行われた内覧会に参加してきました。
サブタイトルに“明末清初”とあるが、中国はこの時代(16世紀後期~18世紀初頭)、政治的経済的にもの凄く混乱していて、大きく思想的、社会的に変動をきたしていた。
そしてその時代の画家達も、先が見えにくい時代の中で、様々な絵の表現方法を模索し、奇想的、先進的な作品を世に送り出していった。
『~様式』とか、「~派』、『~イズム』といった代名詞が冠せられていないから、ちょっとどういった絵をそう称するのか、イメージ出来なかったんだけど、大丈夫。この展覧会を見れば分かります。いや、まだ勉強中だから完全には理解出来てないけど。
※画像は関係者から特別の許可を頂いて撮影しています。
日本が誇る世界水準のコレクション
この展覧会で見られる明末清初絵画は、先日見に行った静嘉堂文庫美術館が、当館所蔵品限定で展示していたのとは違い、泉屋博古館所蔵のものは勿論、東京・京都・大阪の博物館、美術館の所蔵品も展示されている。
先に見た静嘉堂文庫の展示品も凄いと思ったが、泉屋博古館は更に上を行っていると、展示室に入った瞬間思った。
まあ、感動はすぐ刷新されるものなのだ。両展覧会は展示テーマも違うし、単純に比較すべきものでもない。
右端は米万鍾『柱石図』。
怪石趣味にハマっていたという作者が描いた奇石。この形が何とも言えない。
更に、この絵は絖本という、特殊な織り方の絹である“ぬめ”と呼ばれる素材に描いていて、下から見上げると画が光り輝くという凝りよう。
これは“奇想”と呼ばれるに相応しい一品ではなかろうか。
その左隣は同じく米万鍾『寒林訪客図』。
伝統的に、中国の山水画はスケールを大きく描くのだが、これは遠方に描かれた木がそれ程小さくないので、箱庭的世界観になっている。ちょっとファンタジー入ってるのか。
こちらは明末四和尚のうちの一人、漸江の『江山無尽図絵』。
当時は漸江のように世俗から離れて、出家した画家も数多くいた。
この人の作品は2点並べて展示されているのだが、この絵は淡く色が塗られている。もう1点は墨一色だった。
絵には遠近法が用いられていて、視点があちこち飛んでいる所が面白い。
この絵巻を見ていると、不思議な事に、藤牧義夫の隅田川絵巻を思い出した。
と、作品のごく一部しか紹介出来てないのですが、作品の魅力は実際に足を運んで見て頂くのが一番だと思うので、このぐらいにしておきます。名品揃いなので見応えがあります。お勧めします。
静嘉堂文庫のコレクションは、明治以前に日本に入って来た明清絵画がメインだった一方、泉屋博古館のコレクションは、明治以降の住友財閥当主達の審美眼で、あんまり伝統にこだわらない、西洋画観をフィルターにした、言わば画家性を重視したものが集められている。
明治末期~大正期になると、今度は中国の辛亥革命によって明清絵画の名品が日本に続々ともたらされ、この先西洋等に流出しないように、日本側でガッチリと掴んでおいたという事なのだ。
そうか、中国では動乱によって生まれた新しい美術品が、次の時代の動乱で流されてしまったのか。皮肉なものだ。
展覧会インフォメーション
『典雅と奇想』 明末清初の中国名画展
会期:11月3日(金・祝)~12月10日(日)
前期:11月3日(金・祝)~11月19日(日)
後期:11月21日(火)~12月10日(日)
開館時間:午前10時00分~午後5時00分(入館は4時30分まで)
前期・後期で展示替えが行われますが、画帳・画冊は更に短期間で画面替えを行います。
八大山人の『安晩帖』に至っては、ほぼ日替りで頁替えをするという恐ろしさ。
スケジュールも決まってるぞ。
因みにスケジュール外だったこの日は、『猫図』が公開されていた。
中国の画家達は、基本的にゆるキャラを描くのが伝統的にあんまり得意じゃないそうなのだが、これは例外的に可愛い。
※なお、会場では先着10名様に単眼鏡無料レンタルサービスを実施しています。
次回訪問の際には利用したいです。
泉屋博古館分館 特別展「典雅と奇想 明末清初の中国名画展」にて単眼鏡無料レンタル実施 (プレスリリース) - エキサイトニュース
静嘉堂文庫美術館の『あこがれの明清絵画』展と連携しています。併せての鑑賞がおすすめ。