この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

住友家15代当主住友春翠が蒐集した逸品が堪能出来る展覧会。

東京(六本木)|住友コレクション 泉屋博古館

去年泉屋博古館で展覧会感想アンケートに答えたら、今年の年賀状としてこの『バロン住友の美的生活』展の入場割引葉書が送られて来た。「ラッキー♪ でもまだまだ先じゃん。」と思ってたらもう今週末から開催って…お、オソロシイ!

と慄いていたのが先週の話。実は一足先に内覧会に招待されたので、行って来ました。

※会場の写真は、主催者の許可を得て撮影したものです。


実は徳大寺家から住友家へ養子入りしたというお方
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だから“バロン”の称号が冠せられているのか。

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須磨別邸。庭側からの眺め。

住友春翠(1864-1926)は、明治時代に住友事業の近代化を一気に推し進めた事で知られているが、そこで築いた財によって数々の美術品を蒐集していた。そして明治36年、神戸須磨に建てた西洋館に、それらを飾っていた。そこはまさに邸宅美術館そのものだったという。
建物自体は、残念ながら昭和20年に戦災で焼失してしまった。
会場ではその別邸を忠実に再現した模型が展示されていて、どの作品がどのように飾られていたかが、詳細に分かる様になっている。

この展示は建物が現存していないが為に、逆に幻想美術館の様相を呈していて面白い。明治時代人の美的感覚って、一種独特なのだ。
春翠は、建物こそが人間教育に必要不可欠なものなのだと言っていた。
これらのコレクションは、単に個人的な好みによって選ばれたのではなく、日本文化が発展する為に、先ず日本人に本物を触れさせる事を目的として、買い求めたのだろう。
実際この建物は当時、限定的ではあったが外部にも公開されていたし、外国の要人を招き入れる時にも使用され、大使館的役割も果たしていたという。

青銅器コレクションで泉屋博古館のシンボルキャラ(元祖ゆるキャラ?)に初対面。
春翠コレクションの根幹が青銅器だと学芸員の方から伺った時は、いまいち青銅器って興味がないなーと正直思っちゃったんだけど、見ると聞くとでは大違い。実際の青銅器コレクションに対面した時は、うわー!、これ買う時どんだけ本人テンション上がってたんだろう?と思わずにはいられない程の奇想な品々が並んでいて目が釘付けになった。
ここからは、立体怪獣玩具を熱心に集める少年達と何ら変わらない眼差しが見て取れる。対象物の歴史的価値や価格は桁違いなのだが。

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実際に叩ける展示品もあり。音を鳴らしてみた。これは勿論レプリカ。叩く場所によって音の高さが変わる。

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虎卣(こゆう)という虎の神を型取った置物。この写真では分かり辛いんだけど、虎の腹部分に人がしがみついている。
これの元々の用途は酒器って…マジっすか!?

家に帰ってから気付いたんだけど、以前この美術館を訪れた時に押したスタンプの絵柄は、正にここで見た青銅器だった。いつの間にか実物と対面してたんだ。何だろうこれ?って、押した時は思ってたんだよな。

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よくよく見ると上の酒器とは別物なのだが、系統的には一緒だと思う。

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後姿が凄いのだ。

普段は京都の本館が所蔵しているので、東京で見られる機会は滅多にないとの事。
これらの青銅器コレクションは3月21日(月・祝)迄の展示なので、見たいと思う方は、急げ!


この展覧会は、住友春翠が生涯に渡って蒐集した美術品、則ち泉屋博古館が誇るコレクションを、ジャンル毎に大々的に紹介する、結構大掛かりな企画なのだ。今回は邸宅紹介を中心に据えた第1部で、会期は5月8日(日)迄。
第2部は6月4日(土)からで、今度は数寄者としての春翠をクローズアップ。茶道具を中心にした展示内容に様変わりする。何故春翠は大正時代から日本の伝統美に惹かれていったのか。再訪して、その辺は展示品を目にしながらじっくり考えてみたいところです。