この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

東京国際キルトフェスティバル

第15回東京国際キルトフェスティバル ―布と針と糸の祭典―|東京ドームシティ公式サイト

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キルト愛好家のおばちゃん、おばあちゃん達が全国から集結するキルトフェスティバルに、去年に引き続き今年も行って来た。

今年のテーマはウィリアム・モリスとピーターラビットという、英国寄りのラインナップ。お客さんがより多く訪れていたのはピーターラビットの方だったかな。
でもわたしはウィリアム・モリスの方を中心に見ていた。
 
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ケルムスコット・マナーのインテリアを再現。

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モリスデザインの生地を使ったキルト作品など。

モリスは美しいものを言葉によって伝導する人だったけど、自分自身も絵を描いたし、手工芸も手掛けていた。それらの作品は以前モリス展に展示されていたので見た事があるけど、モリスの手による作品という但し書きがなければ、人目を惹くものではなかった。
言葉で人の心を動かす能力と、実際に自分の手で作った作品によって人に訴えかける能力が共存している人は、稀にしかいないんだろうな。
なんて事を考えながら会場内をぐるぐる回っていた。
 
 キルト界の大御所。黒羽志寿子さん。
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会場内に設置されていたブース内では、キルト作家さん達が自身の技法を伝授していた。
その中でも常に黒山の人だかりだったのが黒羽志寿子さんだった。
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マイクを装着し、黒いアームリストをはめたそのお姿はまるでメタラーのよう。
針を片手にザクザクと、早弾きならぬ早縫いでもしそうな勢い。いやいや黒羽さんはスラッシュメタルじゃなくてスラッシュキルトなんだってば。

ブースの奥にあるテーブルには、ベルニナの確か380が鎮座していた。もうこうなるとベルニナがミシンではなく高級な楽器の様にしか見えない。音楽フェスのノリで見てしまっている。

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変形ログキャビンのパターンによる帯。これはステキだった。こういうロジカルなパターンって大好き!

黒羽志寿子さんについては会場でお目にかかるまで存じ上げなかったのだが、この方は自身の持つ技能と、人に伝える能力とのバランスが絶妙な人なんだろうなと、観覧しながら思っていた。


昔ながらの職人のイメージは口下手で、自分の仕事をベラベラ喋るのは下品だと思われていたんじゃなかったか。技術は基本的にクローズドで、覚えたければ職人の仕事から目で盗んで習得するぐらいの事をしていたのではないかと。
閉じられた世界の中で、いつしか廃れて行った技法も数多くあっただろう。

今は、伝える能力自体が重視されているせいか、パッと見て分からない物は冷遇されがちなんだけど、自分は、見てすぐ分からないからこそ一歩踏み込んでみたいと思う方だ。

今回も、山の様に出店されている作品や品物の中から、何かそういう片鱗を感じさせるものはないかと探していた。
このイベントは所謂メジャーな企業が協賛しているから、それほど怪しげなお店は出てなかったんだけど、そういうお店の片隅から、ちょっとだけ奇妙な匂いを嗅ぎ取る事は出来た。

大型フェスってちょっと非日常な世界で面白いんだよな。いる人達もちょっと不思議だし。また行ってみたい。