読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

バルテュス展

バルテュス展

f:id:almondeyed:20130428185717j:plain

去る4月28日に、『バルテュスナイト☆』(何故に星印?)なるタイトルの夜間内覧会に参加して来ました。

※会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

この日は節子夫人もお招きし、展覧会に向けてのメッセージと、写真撮影が行われました。
ちょっと写真撮影の方は気後れして撮れませんでしたが、着物姿で凛とした佇まいの方でした。

最初に学芸員の方が展覧会の見所を解説。
バルテュスが繰り返し描いていたのが、少女像と猫。猫は画家の分身とも言われている。
少女は完璧な美の象徴。常に変化する、不安定な存在。移りゆくものを留めるように、画家はキャンバスに向かっていたのではないかと。
そして、日本画や、中国の山水画への傾倒。
これもなにか、不安定な、剥落するものに画家は魅せられていたのではと。

今回は没後初となる回顧展です。前回見に行った、東京ステーションギャラリーでの回顧展は1993年だから、もう20年以上経つのか!


バルテュス(1908-2001)の本名はバルタザール・クロソフスキー・ド・ローラ。バルテュスは愛称。
そういえば、いつから画家名をバルテュスと名乗っていたんだろう?1928年の作品では既に“Balthus”のサインがあったけど。


バルテュスの絵というか、存在に魅せられたきっかけはおそらく、新聞の別刷りで紹介されていた記事からだと思う。
そこには、その時点ではまだまだ現役だった画家の、謎めいた素顔が紹介されていた。
インタヴューはほとんど受けない。本人の写真も撮らせない。
そこに載っていたのは、日本で初の個展が開催されて来日した時に、一家で寛いでいる写真だった。
そこでバルテュスの奥様が日本人である事を知る。当時から既に和服姿。

スイスのグラン・シャレという木造の、元はホテルだった大邸宅で、日本人の板前一家と猫3匹と共に暮らすバルテュス一家。
夫人は、バルテュスが日本に来た時に出会い、見初められ、結婚したという。
バルテュスは貴族の末裔。
まるでお伽噺の世界ではないか!
限られた情報が更なる価値を生む。80年代はまだ、神秘のベールが有効に機能していた。


神秘が崩されたのは90年代に入ってから。
篠山紀信がグラン・シャレに潜入して写真を撮ってからだな。
展示室の最後にそれらの写真が飾られている。

f:id:almondeyed:20130428195840j:plain

それ以降は、U2のボノと親交があるとか、デヴィッド・ボウイがインタヴューしに行ったとか、色んな情報が流れてきたので、『20世紀の巨匠。最後の生き残り。』ぐらいの存在に緩和されてきた。のか。
ロックスタアが憧れる、自身には絶対越えられない存在。それがバルテュス


f:id:almondeyed:20130428192209j:plain

アトリエの再現は、世界初の試みだそうだ。
アトリエは聖域のような場所で、節子夫人すら滅多に立ち入れなかった。そのような場所に置かれているものを運び出す事にしたのは、大変な決断だったとか。


f:id:almondeyed:20130428191835j:plain

さて、ひさびさにまとまった数の作品を見ての印象だが、

f:id:almondeyed:20130428194254j:plain

バルテュスが永遠に絵筆を置いてから十数年経つのだが、その間に絵の印象が、どの年代のものであっても、フラットな感じに変化しているような気がする。
前回出品されていた『猫と鏡III』という作品は、当時の最新作だったから、結構絵の具のつき具合が生々しく感じられたのだ。
残念ながらこの絵は今回出品されていないので、比較検証出来ないのだが。

f:id:almondeyed:20130428195752j:plain

ゆっくりゆっくり、時間をかけながら色が落ち着いていき、やがては褪せて、消えて行くのではないかという、そんな不思議な感覚を今回は味わった。
それは、バルテュスの作品は美術館にすらそれほど多くは所蔵されていないという話を聞いていたからかもしれない。
今回出品されている作品も、個人所有のものが多いのだそうだ。
何となく、美術館は描かれている画題だけでなく、保存の観点からも所蔵を渋っているのかと解釈した。間違っていたらすいません。。。

一方で、女性の素肌はどれも執拗に塗り固められていて、ひとつとして同じタッチでは描かれていない。筈。

この、少女像への執着振りが、朽ち果て願望とも取れる画面に展開されているというギャップが凄いじゃないか!


f:id:almondeyed:20130428202423j:plain

ショップでは写真集の予約販売も行なっている。
あの邸宅の片隅で、こんな秘事が展開されていた。
忘れちゃいけない。バルテュスの兄はピエール・クロソフスキー。恐るべき兄弟。


時間は限られていたけど、ゆったりと自分のペースで絵に向き合う事が出来て、とても嬉しかったです。
このような贅沢な企画にご招待いただき感謝しております。どうもありがとうございました!

  • 会期:2014年4月19日(土)~6月22日(日)
  • 開室時間:9:30~17:30(金曜日は20:00まで。入室は閉室の30分前まで。)
  • 休室日:月曜日


6月7日からはこちらも!
「バルテュス最後の写真—密室の対話」展|三菱一号館美術館