この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

クインテット-五つ星の作家たち

@損保ジャパン東郷青児美術館


『風景画』をテーマにした、現代作家による企画展。

  • 出品作家

児玉靖枝、川田祐子、金田実生、森川美紀、浅見貴子

この5人はいずれも1960年代前半ぐらいの生まれで、美大出身。この企画展には、20年ぐらいコンスタントに作品を発表し続けている、女性で、風景画を描く実力者という基準で選出されたようです。

この中で名前を認知していたのは浅見貴子さんだけでしたが、彼女の作品をまた観れるなら行きたいなと思い、展覧会開催の前日に行われる、開会式を含めた内覧会招待の募集があったので応募したところ、当選したので一足早く観てきました。でも感想を書くのがこんなに遅くなってしまった…。


これはプレス向け内覧会でもあったので、会場内ではそこかしこに人の輪が出来、談笑が始まる。そしてそれはアーティストトークが始まってからも続く。
これは絵を見に来たというよりも、人の顔を見に来たようだな。
一般公開前の内覧会ってどんな感じなんだろう?という興味もあってこのイベントに応募してみたのですが、何となく様子は分かりました。
もちろん、会場内では絵をしっかり鑑賞している人の方が多かったです。念のため。


作家さん達自身のアーティストトークは皆興味深いものでしたが、ここでは特に印象深かった森川美紀さんのトーク場面を触れておきます。

他の作家さんのトークでは、作品の説明が始まると、観客はその作品をよく見るために近づいて行くものなんですが、彼女の作品の前には誰も近寄って行かなかった。
それは、彼女の設置した展示空間がカッチリと綺麗に構築されていたので、その中に割って行きづらかったのではないかと思った。

じつは、トークの始まる前に彼女の作品を観た印象はいまいちピンと来なかったのだ。
でも、彼女のトークが開始されると、妙にストンと来るものがあった。
たぶん、喋りや身振り手振りとが合わさって、作品と展示空間がワッと浮き立ってくる、そんな手応えを感じたからなのだろう。
これは、いくらトーク内容を文字起こししても、そこからは読み取りにくい感覚だ。
今までいろんな作家さん達のトークを見聞きしてきたけど、これからはもうちょっとその人の存在感というものを意識しながら聞くようにしようと、今回のトークを聞いて思ったのであった。


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一生懸命解説する森川さん。
スコーンと突き抜けた感じの展示空間だった。


出品作家さん達は皆、だいたい今から30年前が現役の学生時代だったという事になる。
当時の自分はなんちゃって一画学生という立場でしかなかったので、これは妄想にも似た想像に過ぎないのだが、あのころ最先端だった曲をカセットデッキなどでがんがんかけながら、キャンパスのアトリエなんかで大作をグイグイ描いていたすがたが、彼女たちの佇まいから浮かび上がってきたのだ。


これは作品自体の雰囲気からも感じ取れた事だ。
金田実生さんの作品からは特に。
何処からそう感じるのかうまく説明出来ないんだけど、やっぱり色使いから醸し出されているのかなぁ。
ここだけは譲れない(いまどきの若い子には負けない!)、という強い意志を感じたのだ。

30年前のあの時代に画家を志し、ずっと切磋琢磨して来た人達の、これがひとつの到達点、いや、通過点だというのを見せつけられたようだった。


いろいろ書きたい感想が山のように押し寄せたんだけど、ひとまず今回はこれまでにしておきます。

この企画展と連動して、各作家さん達の個展が都内のギャラリーで開催中、またはこれから開催されるようです。
気になる方は場所を検索して、足を運んでみてはいかがでしょう。(丸投げ!)