この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

『美術にぶるっ!』展 夜間特別観覧会 11/7(wed)

東京国立近代美術館 60周年記念特別展 『美術にぶるっ!』 ベストセレクション 日本近代美術の100年


自分はブロガーとはとても言えないし、美術関係者の知り合いもいない、ただのいち美術鑑賞者に過ぎないのですが、図々しくもこの夜間特別鑑賞会なるイベントに応募してみたら、幸運にも当たったので、労働後の疲れた身体に鞭打って参加してきました。


鑑賞前に地下の講義室で軽いレクチャーを受ける。15分で終わる予定だったのに、ゆうに5分はオーバー。
矢継ぎ早にパワポ?の解説表がスクリーンを飛んでいくので、ろくにメモも取れなかった。
わかったのは、今回の展覧会は当館のコレクションを並べただけのものではないという事。
他館所蔵品も多数展示の、明確なテーマを持った展覧会なのだ。
つまり、開館以来60年の中で起きた美術の流れを示し、それが現在にどう繋がっているのかを問いかける試みなのだ。


というのを聞いて、思いっきり煽られた気分に陥ったのですが、レクチャー終了後は各々自由に観覧していいみたいだったので、とりあえず順番は無視して、エネルギーがあるうちに1Fの「実験場 1950s」から見ることにしました。


※写真は主催者の許可を得て撮影しました。

第II部 実験場 1950s


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“実験場”というから1950年代の「実験工房」周辺をクローズアップした展示なのかと思っていたんですが、そんな限定的なものではなかったです。
今まで自分がコツコツと時間をかけてあちこちで見てきた、または残念ながら見逃していた方々の作品が一気に集結。
こんな風に、ひとつの展覧会だけである程度見たいものが事足りてしまうっていうのが衝撃だった。


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河原温「浴室」シリーズ。この分量はただ事ではない。
初期作品ははじめて見た!


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生誕100周年記念展をうっかり見逃してしまった花森安治の「暮しの手帖」も、ここで見ることができた。


もちろん、実験工房に参加していた福島秀子、山口勝弘、北代省三等の作品もひしめいていた。
で、個人的に今回の展覧会で一番見たかった石井茂雄の作品にお目にかかった時はもう…。
未完の銅版作品が出品されていたんだけど、ちょっとエッシャーを思わせる画面処理があったりして、へぇ〜!と思った。


当時の社会状況を追ったドキュメンタリー・フィルムや、ニュース映像等も公開されていたが、今までテレビ等のメディアでも殆ど流れた事がなかったのでは?と思わせるものだった。これを見てたらあっという間に時間切れになりそうなので、これは次回訪問の際にじっくり見ることにしよう。
そう、2時間の鑑賞時間では到底足りないという事を主催者側は見越してくれていたようで、何と招待券も頂いてしまったのだ。
いや、招待券がなくても皆さん、12月1日は開館記念日なので、この日は誰でも無料で観覧出来ます!
それと、まだ自分の誕生日を迎えていない方は、誕生日当日に行くと無料で鑑賞出来るサービスを、来年1月14日迄、つまりこの展覧会の会期末迄行なっています。
実はわたしもこれから誕生日を迎えるので、このサービスの恩恵も受けられるのだ。

第I部 MOMAT コレクションスペシャル


通常は、美術館が所蔵する重要文化財は1年のうちに会期を分けて少しづつ展示されているものなのだが、今回は所蔵品13点を一気に公開するというのが、このセクションの目玉。
館内が大幅にリニューアルされたので、今まで見慣れていた作品も、なんだか違った雰囲気に見えたりした。


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日本画の展示室は深い紺色が基調に改められていた。幻想的な雰囲気。
ここは畳にする案もあったとか。
ダメだダメだそんな事をしちゃあ。そこでくつろいじゃって団子でも食いたくなるから。


こちらは、展示室の壁のどこを見ても名品ばかりで、目移りも甚だしいという困った展示。
普段の常設展示だと、必ずどこかで息を抜ける作品が掛けられているものだが、今回はそういうのがない。
例えば、こんな小品であっても…、


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「ふ、藤牧義夫ぢゃないの〜!!」
となる。全然気が抜けない。


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ここは1960〜70年代の現代美術コーナー。
自分にとっては近代美術館の常設展示っていうと、こういうイメージが根付いているんだよなぁ〜。
リニューアルはしたけど、こういうモノトーンな部分もしっかり健在。


わたしがこの美術館にはじめて足を運んだのは昭和の時代に遡るんだけど、あの頃の常設展示コーナーからは、どこからともなくカレーの匂いが漂ってきたような思い出が…。いや、これは別の美術館だったかもしれない。でも、美術館の常設展示室ってどこか野暮ったくて、ちょっと陰鬱な空間だったよな。
その、野暮ったさから目を背けずに、というか、そこと真摯に向き合ったセレクションが、今回の『実験場』だったんじゃないかなーと、フト思った。あれは少なくとも、戦後日本美術の主流ではない。隅の方で鈍い光を放っていた作品群だ。そういうものだけを掬い取ってきて、ドーンと正面に並べて勝負をかけたような、そんな印象だった。


それにしても、今年はここによく足を運んだなー。いや、まだまだ来るつもりですが。
ジャクソン・ポロック展を見た時は手帳も頂いたのだ。


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行った日は原弘ヴァージョンだった。うれし〜!