この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

Patti Smithの胸


Patti Smith - Horses (Full Album)

回想ばなしの続きです。

ある日、パティ・スミスの「Horses」のジャケットを見ながら彼女は、

パティ・スミスは痩せぎすな身体に、チョコンと小さな胸が乗っかってるのがいいんだよね。」

というような事を言った。
わたしはそれを聞いて何か引っかかるものを感じながらも、「うん。そうだね~」と、彼女の意見に同意して、その話は終わった。


わたしはその頃、あんまりパティ・スミスの写真を数多く見ていなかったんだけど、この、男物に見える白シャツからでも、ツンと緊張の走った胸の膨らみが見えるので、そんなに小さくないんじゃないか?と、漠然とだが思っていた。


しかし何のことはない。後日彼女とお互いのバストサイズの話になって分かったのだが、これは“自分と比べて”の印象だったのだ。


彼女はいつも男の子っぽい格好をしていて、このパティ・スミスみたく、よく男物の白シャツを着ていた。
小柄だったので、だいたい腕まくりして着こなしていた。
皆さん、80年代といえばシャツでもジャケットでも腕まくりして着るのが流行りだったのですよ。覚えてますか~?(笑)
こういう服を好んでいたのは、自身の女性らしい体型を隠したかったからなのだろう。
実際にバストの話をするまで、彼女の胸がそんなに大きかったなんて全然気付かなかった。
実際見たことはなかったんだけど、左右の大きさがかなり違っていたそうで、それもコンプレックスだったようだ。
高校生の頃はもっとふっくらしていたので、必死のダイエットで体重を落としたらしい。お昼はリンゴ1個しか食べなかったとか言ってたな。


彼女は喫煙者だったし、お酒も好きだった。でも、煙草を吸う仕草も、お酒の飲み方も、とても女らしかった。少年ぽい格好をする事で、却って本人の女性性が強調されているようだった。


実際彼女は、わたしと親しくなった頃には婚約してたし、彼女の結婚式にはわたしも出席した。


パティ・スミスだって男っぽい格好だけしてたわけじゃない。結婚もして、子育てもしてた。音楽活動も、中断はしてたけど、いまだに現役だ。


彼女達は自身の女性性を否定していなかった。
あの頃は、パティ・スミスあたりがわたしよりも上世代の、進歩的な女性像の限界点だったのかなと思っていた。
男性に囲われた中で、男の子っぽい振る舞いをする。それは成熟した女性になるのが重苦しいから。でも、状況に応じて、軽やかに女性にスイッチする。
わたし自身は何となく解せないものもあるのだが、“自分らしく”生きるなら、そんな方法もあるのかなと思っていた。


最近は、いわゆる社会人っぽい時間帯で生活するようになったせいか、あんまり巷を歩いていても、男の子っぽいスタイルをした女の子を見かける事がなくなってしまった。
カジュアルなスタイルのものも、シックなスタイルのものも、“機能性”ばかりが重視されているように見える。
みんな、夢を見る事を忘れてしまったのだろうか。
昔のOliveにだって、ボーイッシュなファッションが取り上げられてなかったっけ?
時には性別の壁を乗り越える、女性にはそんな軽やかさも必要だと思う。


なんて事を、彼女の事を思い出しながら、つらつら考えていた。


回想ばなし、もう一回ほど続ける予定です。

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この写真と同じポーズをわたしが取ったとしても、わたしの胸は絶対こうならないよー…(苦笑)