この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

鈴木清写真展 百の階梯、千の来歴

@東京国立近代美術館 ギャラリー4
鈴木清(1943-2000)という写真家の存在は、この展覧会を見るまで知らなかった。
ただ、チラシの雰囲気に惹かれた。匂いを嗅ぎ付けたという感じか。
調べてみたら、去年開催された「‘文化’資源としての《炭鉱》展」にも、この人の作品が展示されていたようで。これ、見逃しちゃったんだよな。今更ながらもったいない事をした。


会場には、鈴木清が生前残した、自費出版による8冊の写真集が、手に取って見られるようになっていた。
但し、備え付けてある白手袋を着用して。
この写真展で最も気になったのは、写真作品ではなく、写真集という本の形態そのものだったので、この配慮は実に有り難かった。のだが、本によっては手袋着用だと非常にめくりにくくて難儀した。例えは悪いが、まるでパン食い競争でもやっているような不自由感。これは何かの罰ゲームか? もしかしてmy手袋を持参すべき?


白手袋は、前に見ていた人のぬくもりや湿り気が残っているものもあって、ちょっとモヤッとするものがあった。


展覧会のサイトを見ていたら、特別企画としてエッセイが寄せられていて、その中の小沼純一氏のエッセイのテーマが、そのものずばり「汗」と「湿度」であった。ああ、あの白手袋も、ここに呼応しているんだなと、妙に合点がいったというか何というか。
そう、美術館という非日常空間にありながら、非常に人間の体温を感じさせる展覧会だったのだ。


会場で立ったまま写真集を眺めていてもちっとも頭に残らなかったので、思い切って文庫サイズのカタログを購入。これ、よくよく見ると造りも丁寧だし、小さいから手軽にパラパラと見れるし、凄くいい本だと思った。