この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

陰影礼讃―国立美術館コレクションによる

@国立新美術館


「陰影」をテーマにした展覧会という事で、開催前から結構気になっていたのだが、なかなか見に行けなかった。
最初、「陰影礼讃」というタイトルから勝手に、細かく区切られた部屋で薄明かりのもとに作品を鑑賞する試みなのかとイメージしていた。これが庭園美術館のような空間なら効果絶大だったろうに。
でも、新美術館のように広々とした空間だからこそ、影の効果を存分に発揮出来た作品もあった。
1つ挙げるとするならば、高松次郎の「影」か。
あれは、薄暗がりで発生するであろう自分自身の影と、作品に描かれた巨大な影とが、イメージとして溶け合ってしまうような錯覚に陥り、見ているだけで不穏な感情が呼び起こされた。


関東地方に住んでいる者としては、東京国立近代美術館国立西洋美術館のコレクションは割と馴染みのある作品が並んでいたなと思ったんだけど、京都国立近代美術館国立国際美術館のコレクションは目新しく感じられて、なかなか新鮮でした。何と甲斐庄楠音の「幻覚」が見れた!これが見れただけでもかなり満足。ま、あとは1点だけだったけどピラネージとか、一連の西洋美術館が誇る版画作品がドドッと展示されていたのも見応えがあった。それから意外と写真作品のコレクションも充実していたというのを知っただけでも収穫。


そうそう、この前埼玉県立近代美術館で「スウィンギン・ロンドン展」を見に行った時に、常設展も一緒に見たんだけど、テーマが「光と風の贈り物」でした。これ、もしかして「陰影礼讃」に対抗しての企画だったんだろうか?
ちなみに埼玉県立近代美術館も、国立新美術館と同じく黒川紀章が設計。なんでも黒川氏が初めて手がけた美術館だそうで。(トリビア終了)
両方の展示を見比べるには作品数も規模も段違いなのですが、クロード・モネの作品は両展に展示されていたし、作者は違うけどテーマが被る作品もあったし。要するに、「光」と「影」は表裏一体という事か。


国立新美術館に行ったのは暗くなってからだったんだけど、帰りに2階からエスカレーターで降りようとする時に、ガラス張りのウェーブに幾つも映し出された自分の黒いシルエットを発見し、ギョッとするのと同時にその幻想的な光景に「これも作品の一つになっているんだろうか…。」と思いながら、暫し見とれていたのでした。