この世はレースのようにやわらかい

音楽ネタから始まったのですが、最近は美術、はたまた手芸等、特に制限は設けず細々と続けています。

スコット・ウォーカー 30世紀の男

@第三回爆音映画祭

爆音映画祭、第三回目にして初参加。しかしシアター2での上映なのでチケットを買う時に、
「爆音じゃないですけどよろしいですか?」
と、販売員から念を押されてしまった。
いえいえ、全然いいんですが。
スコット・ウォーカー 30世紀の男 [DVD]
既にこのようにDVDも発売されているのですが、でかいスクリーンで見たかったんだい!
シアター1ではミッシェル・ガン・エレファントの映画が上映されるというので、ロビーは若いお客さんでごった返していた。
音響チェックが長引いているのか、上映予定時刻が迫っているのにまだお客さんが入れない状況だった。しかし、こっちは予定通りの進行ですんなり入れた。いや、すんなりではない。お客さんをかき分けなきゃならなかったので、結構大変だった。
上映中、時折隣からの爆音が漏れ聞こえていた。まるでライヴハウスの演奏中に、隣の個室で秘密の上映会を行なっているようなイメージでしたわ。


スコット・ウォーカーを知ったのはいつだったのか…。思い出してみると坂本龍一サウンドストリートに行き着く。デヴィッド・シルヴィアンがゲストの時だった。その時ちょうどスコットは久々のソロ・アルバム、「Climate Of Hunter(asin:B000A7SBMC)」を発表していて、デヴィッドはこのアルバムを紹介していた。それを聴いて、なるほど、彼のヴォーカルスタイルのルーツはスコットなんだ!と、思ったのを記憶している。
スコット・ウォーカーと80〜90年代英国ミュージシャンとの親和性は驚くほどに高い。映画では懐かしの顔が次々と登場していた。デヴィッド・ボウイジャーヴィス・コッカーデーモン・アルバーン、マーク・アーモンド、ジョニー・マー、何とキャサール・コフランも!まあ、スコットの曲を歌ってたし。それから、姿を見せなかったのがちょっと気になったジュリアン・コープとか。彼は書簡のみで存在感を示していた。あと、エクトル・ザズーも。この方、2008年にお亡くなりになっていたのですね…。
それから、ブライアン・イーノが老眼鏡(多分)を外しながら、

「ナイト・フライツ」 これを聴くのは屈辱的だ。今でもこれを越えられない。

と語るのがもう…。困ったもんだ。


だいたい、わたしが“遅ればせながら”彼の存在を知ったのは25年以上も前の事で、スコットはその間、「ポーラX」のサントラを含めてもたったの4枚しかアルバムを制作していない。このままのペースで作品を発表するつもりなら、次のアルバムをリリースする時、彼は70代に達しているという事になる。ぎゃーっ!聴くこちら側の方がドロップアウトしそうなんですが…。でも、自分は実は、スコットの大仰なヴォーカルスタイルや、作り上げるみょーにスローモーな音世界を受け入れるのにえらく時間がかかったのです。毒を少しずつ身体の中に注入していって、耐性を作ったという感じか。何のために??と思ったりもするのですが、そうしたくなる魅力が彼の音楽には詰まっていると思います。だから、まだまだ当分付き合っていけると思いますし、そうするつもりです。


さて、次は「ポーラX」を、今度こそ爆音で見ようかな…。


(6月10日追記)
スコットはこのドキュメンタリー映画の後にインストゥルメンタルのアルバムを1枚リリースしてるから、合計5枚でした。訂正。